【故事成語】
悪を見ること、農夫の努めて草を去るが如し
【読み方】
あくをみること、のうふのつとめてくさをさるがごとし
【意味】
悪いことを見つけたら見過ごさず、草を根から取るように、もとから断つべきだという教え。


【英語】
・nip something in the bud(悪い芽を早いうちに摘む)
・stamp out wrongdoing(悪事を徹底してなくす)
【類義語】
・転ばぬ先の杖(ころばぬさきのつえ)
・予防は治療に勝る(よぼうはちりょうにまさる)
【対義語】
・臭い物に蓋をする(くさいものにふたをする)
「悪を見ること、農夫の努めて草を去るが如し」の故事
この故事成語は、中国の古典『春秋左氏伝(しゅんじゅうさしでん)』に由来します。『春秋』をくわしく伝える書で、ふつうは『左伝(さでん)』とも呼ばれ、古くから左丘明(さきゅうめい)の作と伝えられてきました。
もとの文が出てくるのは、『春秋左氏伝』隠公六年の条です。ここでは、国どうしの関係が悪化し、鄭が陳を攻めた出来事のあとに、出来事を評する文章が続きます。
話の発端は、その前の年に鄭が陳へ和睦を求めたことにありました。陳の家臣は、仁ある者を大切にし、隣国とよい関係を結ぶことこそ国の宝だと進言しましたが、君主はそれを聞き入れませんでした。
その結果、陳はのちに鄭の侵攻を受けます。そこで本文は、善いことを失ってはならず、悪いことを長くのばしてはならないと述べ、悪を育てたことが災いを招いたのだと評しています。
その流れの中で引かれるのが、周任のことばです。そこには、国を治める者は、悪を見たなら農夫が草を取り除くようにしなければならない、という意味の教えが書かれています。
しかも、もとの文は、ただ草を払うだけでは終わりません。草を刈り、根を絶ち、二度と生え広がらないようにせよという内容まで続いており、悪を小さいうちに、しかも根から断つべきだという厳しい姿勢がはっきり示されています。
ここから、この故事成語のいちばん大事な意味が分かります。それは、悪を見つけたときに見て見ぬふりをしないこと、そして表面だけを取りつくろわず、原因まで改めることです。
もとの文では、まず国を治める立場の者への戒めとして語られています。けれども、そこから意味が広がり、今では学校、家庭、職場、地域などでも、悪い行いを早めに正す教えとして受け取りやすい言い方になっています。
この表現に農夫が出てくるのは、とても分かりやすいところです。畑の草は、少しのうちは目立たなくても、そのままにすると作物の育ちをじゃましますから、悪も同じように、早く取り除かなければ善いものを弱らせる、というたとえになっています。
つまり、この故事成語は、悪を見つけたあとにどう向き合うかを教えることばです。悪を放っておかず、広がる前に、根まで見きわめて改めるべきだという、きびしいが実際的な教えとして受け継がれてきました。
「悪を見ること、農夫の努めて草を去るが如し」の使い方




「悪を見ること、農夫の努めて草を去るが如し」の例文
- 先生は、名簿の順番を変えて友だちを笑いものにするいたずらを見つけ、悪を見ること、農夫の努めて草を去るが如しという考えですぐにやめさせた。
- 会社では、小さな不正のうちに改めるべきだとして、悪を見ること、農夫の努めて草を去るが如しを合言葉に確認を厳しくした。
- 家族の間で人の悪口を言うくせが続いたため、父は悪を見ること、農夫の努めて草を去るが如しと思い、食卓での言葉づかいを改めた。
- 町内会は、うわさ話から生まれた対立を広げないため、悪を見ること、農夫の努めて草を去るが如しの姿勢で事実を確かめた。
- 部活動で道具を隠すいたずらが起こり、顧問は悪を見ること、農夫の努めて草を去るが如しとして、すぐに原因を調べて注意した。
- 古い文章を読むと、悪を見ること、農夫の努めて草を去るが如しは、悪を小さいうちに根から断つ教えだと分かる。























