【ことわざ】
片手で錐は揉まれぬ
【読み方】
かたてできりはもまれぬ
【意味】
物事を成し遂げるには、ひとりで抱えこまず、力を合わせることが大切だというたとえ。


【英語】
・Many hands make light work.(人手が多ければ仕事は楽になる)
【類義語】
・孤掌鳴らし難し(こしょうならしがたし)
・単糸線とならず(たんしせんとならず)
・三人寄れば文殊の知恵(さんにんよればもんじゅのちえ)
【対義語】
・孤軍奮闘(こぐんふんとう)
「片手で錐は揉まれぬ」の語源・由来
「片手で錐は揉まれぬ」は、錐(きり)という道具の使い方をもとにしたことわざです。錐は、板材などに穴をあけるための工具を指します。
「揉む」は、両手の間に挟んでこすることを表す言葉です。「錐を揉む」という言い方は、錐の柄を両手のひらで挟み、こすり合わせるように回す動作を表します。
この動作を指す言葉に、「錐揉み」もあります。これは、穴をあけるために錐を両手のひらで挟み、強く回すことです。
「錐揉」は、鎌倉時代の古い字書『観智院本名義抄』(1241年)にも語として出てきます。古くから、錐を両手で揉み回す動作が、具体的な作業を表す言葉として用いられていたことが分かります。
江戸時代前期の笑い話の本『枝珊瑚珠(えださんごじゅ)』(1690年、石川流宣ら作)にも、「あたまにきりもみをせよといわれて」という用例が出てきます。ここでも「きりもみ」は、錐を揉む動作にもとづく言葉として使われています。
このことわざは、そうした両手を必要とする作業を、人の協力に置き換えた言い方です。片手だけでは錐をうまく回せず、穴をあける目的を果たせないように、ひとりだけでは進まない仕事があります。
表記には「片手で錐は揉まれぬ」のほか、「片手で錐は揉めぬ」の形もあります。いずれも、片手だけでは錐を揉むことができないという具体的な事実から、協力の大切さを述べる点は同じです。
このことわざが教えているのは、ただ人を集めればよいということだけではありません。錐を回す両手が同じ目的に向かって動く必要があるように、協力する人どうしも役割を分け、同じ目標に向かうことが大切です。
同じ考えは、「孤掌鳴らし難し」や「単糸線とならず」にも通じます。片方の手だけでは音を鳴らせず、一本の糸だけでは物にならないという比喩も、ひとりだけでは物事を成し遂げにくいという考えを表しています。
現在では、学校の係活動、地域の行事、家庭の手伝い、仕事の計画など、協力が必要な場面で広く使えます。小さな道具の扱いから生まれたたとえが、人と人とが力を合わせる大切さを、分かりやすく伝えることわざになっています。
「片手で錐は揉まれぬ」の使い方




「片手で錐は揉まれぬ」の例文
- 文化祭の大きな看板作りは、片手で錐は揉まれぬで、係全員が役割を分けて進めた。
- 新しい地域行事を成功させるには、片手で錐は揉まれぬという考えが欠かせない。
- 兄はひとりで引っ越しの荷造りを抱えこまず、片手で錐は揉まれぬと家族に手伝いを頼んだ。
- 会社の難しい企画も、片手で錐は揉まれぬと思って、部署を越えて相談した。
- 災害のあと町を整えるには、片手で錐は揉まれぬで、住民どうしの協力が必要になった。
- 研究発表の資料作りは、片手で錐は揉まれぬと気づいて、友人たちと分担した。
主な参考文献
・現代言語研究会『日本語を使いさばく 故事ことわざの辞典』あすとろ出版、2007年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『デジタル大辞泉』小学館。
・公益財団法人日本漢字能力検定協会『漢字ペディア』。
・Merriam-Webster, “Merriam-Webster.com Dictionary.”























