【故事成語】
瓜を投じて瓊を得
【読み方】
うりをとうじてたまをう
【意味】
わずかな贈り物をして、それよりも価値の高い返礼を受けること。また、男女が愛情のしるしとなる品を贈り合うこと。


【英語】
・One good turn deserves another(親切には親切で報いるべきだ)
【類義語】
・投桃報李(とうとうほうり)
「瓜を投じて瓊を得」の故事
「瓜を投じて瓊を得」は、中国最古の詩集『詩経(しきょう)』の「国風(こくふう)・衛風(えいふう)・木瓜(ぼくか)」に基づく故事成語です。四字では「投瓜得瓊(とうかとくけい)」と表します。
『詩経』は、周の初めから春秋時代までの詩三百五編を収めた書物です。各地の歌を集めた「国風」、宮廷の歌である「雅」、祭りの歌である「頌(しょう)」の三部門から成り、「木瓜」は「国風」に収められています。
「木瓜」の第一章には、「投我以木瓜、報之以瓊琚」とあります。相手が私に木瓜という果実を贈ってくれたので、私は瓊琚(けいきょ:美しい玉の飾り)をもって応えよう、という意味です。
それに続いて、「匪報也、永以為好也」と歌います。これは、単なるお返しではなく、末永く親しい関係を結ぶためである、という意味です。
第二章では、贈られる果実が「木桃」、返す美玉が「瓊瑤(けいよう)」となります。第三章では「木李」と「瓊玖(けいきゅう)」に替わり、三章とも、果実を受け取った者が美しい玉で厚く応える形を繰り返しています。
ここでいう「投」は、ただ物を投げ付けることではなく、相手に贈る、与えるという意味を含みます。「瓊」は、赤く光り輝く美しい玉、または広く美玉を指す漢字です。
木瓜の実は身近な贈り物ですが、瓊琚などの玉は貴重な品です。この価値の違いから、後には、わずかな品を贈って、それよりも立派な返礼を受けるという意味が生まれました。
ただし、原詩の心は、高価な品を手に入れる喜びだけにあるのではありません。「匪報也」とわざわざ述べたうえで、末永い親しみを願っているため、贈り物の値段よりも、相手の好意に深い真心で応えることを重んじた歌といえます。
「木瓜」が何を歌った詩であるかについては、古くから解釈が分かれてきました。漢代に成立した「毛序」では、異民族の侵攻を受けた衛を斉の桓公が救ったため、衛の人々がその恩に厚く報いようとした歌と解しています。
一方、南宋の朱熹は、男女が贈り物を交わす歌と解しました。この読み方では、女性が思いを寄せる男性に果実を贈り、男性がその思いを受け入れるしるしとして美玉を返したことになります。
果実を投げて求愛し、相手が身につけていた玉を贈って応える習俗と結び付ける解釈もあります。そのため、この故事成語には、男女が愛情の誓いとなる品を贈り合うという意味も加わりました。
また、「木瓜」の詩は、男女の贈答だけでなく、国どうしが友好を確かめる外交の場でも用いられました。『春秋左氏伝(しゅんじゅうさしでん)』には、この詩が、受けた厚意にさらに厚く報い、末永く親しい関係を結びたいという意思を伝えるために歌われた例があります。
宋代の『書言故事大全』には、「投瓜得瓊」という形が掲げられ、わずかな物を贈って厚い返礼を得ることを表す言葉として扱われています。原詩の一節が、後の時代に四字の簡潔な表現へとまとめられていたことが分かります。
原詩では、木瓜を受け取った者が美玉を「返す」と歌っています。これに対して、「投瓜得瓊」は、木瓜を贈った者が美玉を「得る」という側から言い直した表現であり、日本語の「瓜を投じて瓊を得」は、その四字の形を読み下したものです。
現在では、少ない贈り物によって大きな返礼を受けることを表すのが一般的です。しかし、その根には、相手の好意を軽く扱わず、より深い真心で応え、親しい関係を長く保とうとする『詩経』の願いが息づいています。
「瓜を投じて瓊を得」の使い方




「瓜を投じて瓊を得」の例文
- 旅先で買った小さな菓子を届けたところ、立派な果物の詰め合わせが届き、瓜を投じて瓊を得となった。
- 祖母に手作りのしおりを贈ると美しい万年筆を返され、瓜を投じて瓊を得の思いがした。
- ささやかな手助けに対して丁寧な礼状と記念品を受け取り、彼は瓜を投じて瓊を得と恐縮した。
- 二人が愛情のしるしとなる品を交換する場面は、瓜を投じて瓊を得の故事を思わせる。
- 友好の印として贈った工芸品に、相手の町から貴重な返礼が届き、瓜を投じて瓊を得となった。
- 初めから瓜を投じて瓊を得を期待して贈り物をするのでは、相手を思いやる心が薄れてしまう。
主な参考文献
・小川環樹・西田太一郎・赤塚忠・阿辻哲次・釜谷武志・木津祐子編『角川新字源 改訂新版』KADOKAWA、2017年。
・石川忠久著『新釈漢文大系110 詩経 上』明治書院、1997年。
・白川静訳注『詩経国風』平凡社、1990年。
・石本道明「『詩經』「木瓜」義解管見―「喩」の機能について」『國學院雑誌』第123巻第7号、2022年。
・胡継宗編『書言故事大全』宋代。
・『詩経』「国風・衛風・木瓜」。























