【ことわざ】
借りる八合、済す一升
【読み方】
かりるはちごう、なすいっしょう
【意味】
人に物やお金を借りたら、少し多めに返すか、お礼を添えて返すのが常識であるということ。


【英語】
・One good turn deserves another.(親切には親切で報いるべきだ)
【類義語】
・借りる七合、済す八合(かりるしちごう、なすはちごう)
【対義語】
・借りて借り得、貸して貸し損(かりてかりどく、かしてかしぞん)
「借りる八合、済す一升」の語源・由来
「借りる八合、済す一升」は、米などを八合借りたなら、一升にして返すべきだ、という考えから生まれたことわざです。人に物を借りたときは、借りた分をただ返すだけでなく、感謝の気持ちを添えて返すのが礼儀だという教えを表します。
「合」と「升」は、昔の量を表す単位です。一升は十合に当たるため、八合を一升にして返すとは、借りた八合に二合を足して返すということになります。
この二合の差は、単なる数量の差ではありません。ことわざの中では、貸してくれた相手へのお礼、または借りた者としての心づかいを表すものです。
「借りる」は、あとで返す約束で、人の物を一時的に自分のもののように使うことを指します。もとは「借る」という形があり、近世後期の江戸語で「借りる」の形が広まり、現在の共通語では「借りる」が使われています。
「済す」は「なす」と読み、借りた金品を返す、返済するという意味をもつ言葉です。このことわざの「済す一升」は、「一升を返す」という意味で使われています。
このことわざは、『諺苑』(1797年・江戸時代後期、太田全斎著)に出る表現として伝わります。『諺苑』は俗語・俗諺(ぞくげん)を集め、いろはの各音に配して語釈や出典などを示した、七巻からなる江戸時代の国語辞書です。
『諺苑』のような近世のことわざ資料に収められていることから、この表現は、人々の日常の貸し借りをめぐる心得として用いられていたといえます。米・酒・金銭・日用品などを近隣や知人の間で借りることがあった暮らしの中で、返すときの礼儀を短く言い表した言葉です。
「八合」と「一升」の関係は、読者にすぐ分かる具体的なたとえです。八合を一升にして返すという形にすることで、「少し多く返す」「お礼を添える」という考えが、数字の差としてはっきり伝わります。
このことわざは、借りた人が負担を重くするための言葉ではありません。借りた側が、相手の親切や不便を軽く見ず、感謝をもって返すべきだという、礼儀の心を教える表現です。
類義語の「借りる七合、済す八合」も、借りた量より少し多く返すことを表します。どちらも、貸し借りをただの計算で終わらせず、人と人との信頼を大切にする言葉です。
反対の考え方には、「借りて借り得、貸して貸し損」があります。これは、借りた側が返さずに得をし、貸した側が損をすることがあるという見方を表し、「借りる八合、済す一升」とは反対に、礼を尽くさない貸し借りの危うさを示しています。
つまり、「借りる八合、済す一升」は、物やお金を返すだけでなく、相手への感謝も返すべきだという考えを伝えることわざです。貸し借りの場面でこそ、人の誠実さが表れるという教えが、この短い言葉に込められています。
「借りる八合、済す一升」の使い方




「借りる八合、済す一升」の例文
- 隣の家から米を借りた母は、借りる八合、済す一升の心で菓子も添えて返した。
- 友人に道具を借りたら、借りる八合、済す一升と思って、きれいに手入れして返すべきだ。
- 先生から資料を借りた生徒は、借りる八合、済す一升の礼儀を忘れず、感謝の言葉を添えた。
- 仕事で同僚に助けてもらったなら、借りる八合、済す一升の気持ちで次は自分が力になりたい。
- 親しい間柄でも、借りる八合、済す一升を心がけると信頼関係が保たれる。
- 借りる八合、済す一升というように、借りた物は元の状態より丁寧に扱って返すのが望ましい。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・公益財団法人日本漢字能力検定協会編『漢検 漢字辞典 第二版』日本漢字能力検定協会、2014年。
・集英社『imidas 会話で使えることわざ辞典』集英社。
・太田全斎『諺苑』1797年。























