【ことわざ】
鬼に金棒
【読み方】
おににかなぼう
【意味】
もともと強いものに、さらに強さや有利な条件が加わり、いっそう強力になること。また、すぐれたものに似つかわしいものが加わり、さらに引き立つこと。


【英語】
・make something strong even stronger(強いものをさらに強くする)
【類義語】
・鬼に鉄杖(おににてつじょう)
・鬼に金梃(おににかなてこ)
・弁慶に薙刀(べんけいになぎなた)
【対義語】
・餓鬼に苧殻(がきにおがら)
「鬼に金棒」の語源・由来
「鬼に金棒」は、ただでさえ強い鬼に、さらに強力な武器である金棒を持たせるという発想から生まれたことわざです。強いものに新たな力が加われば、いっそう手ごわくなり、敵するものがなくなるという意味を、鬼と武器の組み合わせによって分かりやすく表しています。
「金棒」の「かな」は、金属、とくに鉄を表します。金棒は鉄で作った太い棒で、周囲にいぼや突起を備えたものもあり、打ち振って相手を倒したり、物を壊したりする武器として用いられました。「鉄棒」と書いて「かなぼう」と読むこともあります。
このことわざにつながる古い用例は、『花鳥余情(かちょうよじょう)』(1472年・室町時代、一条兼良著)に出てきます。『花鳥余情』は『源氏物語』の注釈書で、もともと身分が高いうえに、その時代で並ぶ者がないほど世間から重んじられる人について、「鬼にかなさい棒といふがごときなり」と記しています。
この「かなさい棒」は、鉄で作った強力な武具を指します。現在の「鬼に金棒」とは表記が異なりますが、すでに、強い鬼に鉄の武器を持たせることを、もとの力に名声や有利な条件が加わるたとえとして用いている点は、現在の意味と同じです。
現在と同じ形は、『毛吹草(けふきぐさ)』(1638年序・江戸時代前期、松江重頼編)巻二に、「おににかなぼう かけむまにむち」と並べて収められています。「駆馬に鞭」は、すでに速く走る馬に、さらに鞭を加え、いっそう速く走らせるという意味です。二つのことわざを並べることで、強いものに新たな力を添えるという共通した発想を示しています。
同じころには、金棒とは別の武器を用いた形もありました。『可笑記(かしょうき)』(1642年・江戸時代前期、如儡子著)巻五には、「鬼に鉄杖なるべし」とあります。芸能を身につけ、さらに学問と武芸への志を深く持てば、鬼が鉄杖を得たように、ますます力強い人物になるという文脈です。
江戸時代後期の滑稽本『浮世風呂(うきよぶろ)』(1809〜1813年、式亭三馬著)には、「あれで愛敬がありゃア鬼に鉄棒さ」とあります。ここでは、すでに長所を備えた人に愛敬まで加われば、さらに申し分のない人物になるという意味で使われています。
このように、古くは「かなさい棒」「鉄杖」「鉄棒」「金梃」など、鬼に持たせる武器の名にいくつかの形がありましたが、江戸時代には、「鬼に金棒」という言い方が広く定着しました。意味も、単に力や武力が増すことだけでなく、才能ある人に優れた道具が加わる、強い集団に頼もしい仲間が加わるなど、好ましい条件によって長所がさらに引き立つことを表すようになりました。
「鬼に金棒」の使い方




「鬼に金棒」の例文
- 守備の堅いチームに得点力の高い選手が加わり、鬼に金棒の強さとなった。
- 計算が得意な姉が表計算ソフトまで使いこなせば、会計係として鬼に金棒だ。
- 経験豊かな大工が最新の工具を手に入れ、鬼に金棒の働きを見せた。
- 人気のある菓子店が駅前へ移転したので、集客の面では鬼に金棒となった。
- 交渉力に優れた部長に法律の専門家が協力すれば、契約交渉では鬼に金棒だ。
- 災害救助の訓練を積んだ隊員が高性能の小型無人機を使えば、捜索活動には鬼に金棒である。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・Electronic Dictionary Research and Development Group編『JMdict Japanese-Multilingual Dictionary』。
・一条兼良『花鳥余情』1472年。
・松江重頼編『毛吹草』1638年序。
・如儡子『可笑記』1642年。
・式亭三馬『浮世風呂』1809〜1813年。























