【ことわざ】
諍い果てての契り
【読み方】
いさかいはててのちぎり
【意味】
言い争いやけんかのあとで、かえって相手を理解し、仲がよくなること。


【英語】
・After a storm comes a calm(嵐のあとには静けさが来る)
・A quarrel may lead to a stronger bond(けんかがより強い結びつきにつながることがある)
【類義語】
・雨降って地固まる(あめふってじかたまる)
・喧嘩の後の兄弟名乗り(けんかのあとのきょうだいなのり)
・雨の後は上天気(あめのあとはじょうてんき)
【対義語】
・覆水盆に返らず(ふくすいぼんにかえらず)
・元の木阿弥(もとのもくあみ)
「諍い果てての契り」の語源・由来
「諍い果てての契り」は、中国古典の特定の故事から出た言葉ではなく、日本語のことわざとして伝わってきた表現です。「諍い」は言い争い、口論、もめごとを表し、「果てて」は終わっての意、「契り」は約束や結びつき、親しい関係を表します。
字面どおりに読めば、「争いが終わったあとの結びつき」という意味になります。ここから、けんかや対立をしたあとで、相手の本音、考え方、気性が分かり、かえって親しくなることをいうようになりました。ことわざとしては、「喧嘩が済んで、仲良くなること」という意味で整理されています。
このことわざの中心にあるのは、争いのあとに生まれる理解です。互いに遠慮しているだけでは分からなかった気持ちが、言い合いを通して表に出ることがあります。そのあとで謝り合い、相手の立場を考え直せば、関係が前よりも安定することがあります。
近い発想をもつことわざに「雨降って地固まる」があります。雨が降ったあとに地面が締まるように、もめごとや困難のあとで、かえって物事がよく収まることをいう表現です。「諍い果てての契り」も、この「悪い出来事のあとに関係がよくなる」という考え方の中に置かれます。
「雨降って地固まる」は、江戸時代前期の俳諧書『毛吹草(けふきぐさ)』(1645年・正保2年刊、松江重頼編)に出典をもつことわざとして知られています。『毛吹草』は、俳諧の作法や言葉、世話・古語などを集めた書物で、ことわざや俗語の伝承にも関わる重要な文献です。
このため、「諍い果てての契り」そのものを一つの古典の一句に結びつけるより、近い意味のことわざ群の中で育った言い方と見るのが自然です。人間関係のもめごとは、昔から生活の中でくり返し経験され、その経験を短く言い表す言葉がいくつも作られてきました。
また、このことわざには、音の似た別の表現として「諍い果てての乳切り木」があります。「乳切り木」は棒のことで、けんかが終わってから棒を持ち出しても役に立たない、という意味から、時機に遅れて役に立たないことを表します。こちらは「仲よくなる」意味ではなく、「もう遅い」ことをいう別のことわざです。
「契り」と「乳切り木」は音が近いため、混同しないことが大切です。「諍い果てての契り」は、争いのあとに結びつきが生まれることをいう言葉です。一方、「諍い果てての乳切り木」は、争いが終わってから道具を出しても遅いという意味です。
表記のうえでも、「契り」は人と人との約束やつながりを表す言葉です。この字が使われることで、けんかのあとに関係が切れるのではなく、むしろ新しい信頼が結ばれるという方向へ意味が定まります。
「諍い果てての契り」は、「けんかをすれば必ず仲よくなる」という単純な意味ではありません。感情的な言い争いのあとに、きちんと謝る、相手の話を聞く、自分の言い過ぎを直す、という過程があって初めて、このことわざがふさわしくなります。
したがって、このことわざは、対立をすすめる言葉ではなく、対立を越えて理解を深めることの大切さを示す言葉です。もめごとをきっかけに相手の本心を知り、前よりもしっかりした関係になるところに、現在の意味がつながっています。
「諍い果てての契り」の使い方




「諍い果てての契り」の例文
- 文化祭の出し物をめぐって口論になった二人は、話し合いのあとで互いの考えを理解し、諍い果てての契りとなった。
- 兄弟はゲームの順番でけんかをしたが、ルールを作り直してから前より仲よく遊ぶようになり、諍い果てての契りだった。
- 仕事の進め方で意見がぶつかった同僚同士は、本音を出し合ったことで信頼が深まり、諍い果てての契りとなった。
- 町内会の行事で対立した住民たちは、準備の苦労を分かち合ううちに、諍い果てての契りのような関係になった。
- 友人と強く言い合ったあと、互いに謝って誤解を解いたので、諍い果てての契りというべき仲直りになった。
- チームの作戦をめぐる諍いはあったが、試合後には全員が率直に反省を語り合い、諍い果てての契りとなった。























