【ことわざ】
一と言うたら二と悟れ
【読み方】
いちというたらにとさとれ
【意味】
一つ言われたら、その用件だけで終わらせず、次に何をすべきかまで自分で考えて察せよという意味。


【英語】
・A word to the wise is enough(賢い人にはひと言で十分伝わる)
【類義語】
・鑿と言えば槌(のみといえばつち)
・一を聞いて二を知る(いちをきいてにをしる)
・一を聞いて十を知る(いちをきいてじゅうをしる)
【対義語】
・一を知って二を知らず(いちをしってにをしらず)
「一と言うたら二と悟れ」の語源・由来
「一と言うたら二と悟れ」は、「一」と「二」という続いた数を使って、ひとつの言葉から次のことまで察しなさいと教えることわざです。「言うたら」は「言ったら」に当たるくだけた言い方で、命じられた一つの用件だけでなく、その後に必要になることまで考える姿勢を表します。
このことわざの中心にあるのは、「一つだけ聞いて、そこから次のことを悟る」という考え方です。同じ発想をもつ表現に「一を聞いて二を知る」があり、この言葉は『論語(ろんご)』公冶長(こうやちょう)の「賜也、聞一以知二」によるものとして伝わります。一つのことを聞いて、それを手がかりに二つ目のことまで推し量る、という意味です。
ただし、「一と言うたら二と悟れ」は、学問上の理解力をほめる言い方というより、日常の用事や仕事での気働きを戒める言い方として使われます。たとえば、机をふくように言われたら、ふきんを片づけ、水道の周りも整えるなど、相手の目的を考えて次の行動へ進むことを求める表現です。
近い言い方に「鑿と言えば槌」があります。鑿(のみ)は木や石に穴をあけたり溝を刻んだりする道具で、使うときには槌(つち)で打つ必要があります。そのため、「鑿を持ってきて」と言われたら、鑿だけでなく槌も一緒に持ってくるのが気の利いた行動だ、という意味になります。
「鑿と言えば槌」は、上方のいろはかるたにも採られていた言葉です。いろはかるたは、ことわざや教訓を短く覚えやすい形で伝えるためのもので、日常生活の中で「先を読む」「気を利かせる」という価値を広める役割をもちました。
また、地方のことわざには、音や短い言葉から次を察する発想をもつ表現が残っています。「がらりと言えば浅蜊汁」は、貝の音を聞けば汁の実が分かるというところから、素早く物事を悟り、機転を利かせよという意味で使われました。同じ説明の中には「一と言うたら二を悟れ」という近い形も挙げられています。
このように、「一と言うたら二と悟れ」は、数の順序を使った分かりやすい言い方で、言葉の表面だけでなく、その先の用件を考える大切さを伝えています。相手の望みを勝手に決めつけることではなく、目的をよく考え、必要なことを丁寧に補う知恵を教えることわざです。
「一と言うたら二と悟れ」の使い方




「一と言うたら二と悟れ」の例文
- 一と言うたら二と悟れというから、配布物を配るだけでなく、欠席者の分も机に置いておいた。
- 受付を頼まれたら案内板の位置まで気にするのが、一と言うたら二と悟れというものだ。
- 母に買い物を頼まれた兄は、一と言うたら二と悟れを心がけ、夕食に使う調味料も確認した。
- 共同作業では、一と言うたら二と悟れの気持ちで、相手が次に必要とする道具を用意したい。
- 言われたことだけをして帰るのでは、一と言うたら二と悟れとは言えない。
- 部活動の準備では、一と言うたら二と悟れを意識し、ボールだけでなく空気入れも持って行った。
主な参考文献
・現代言語研究会著『日本語を使いさばく 故事ことわざの辞典』あすとろ出版、2007年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・『論語』。























