【ことわざ】
一度死ねば二度死なぬ
【読み方】
いちどしねばにどしなぬ
【意味】
人が死ぬのは一度だけだと考え、重大なことに向かうときに、恐れを断って覚悟を決めることば。


【英語】
・A man can die but once(人は一度しか死なない)
【類義語】
・一度焼けた山は二度は焼けぬ(いちどやけたやまはにどはやけぬ)
【対義語】
・命あっての物種(いのちあってのものだね)
「一度死ねば二度死なぬ」の語源・由来
「一度死ねば二度死なぬ」は、「一度」と「二度」を対にして、死が一回きりであることを強く言い切ったことわざです。「一度」は一回・いっぺんを表し、「死」は生命がなくなることを表します。また「死」の字には、命がけ、危険にかかわる意味の使い方もあります。
このことわざの中心は、死そのものを軽く扱うことではなく、「恐れてばかりいても、死ぬのは一度だけだ」と自分に言い聞かせるところにあります。ことばの形としては、複雑な物語から生まれたというより、「一度」「二度」という数の対比を使い、逃げ場のない覚悟を短く表した言い方です。
「一度死ねば二度死なぬ」は、見出し語として「いちどしねばにどしなぬ」と読み、事に当たるとき決死の覚悟を決めて自分自身に言い聞かせることばとして使われています。つまり、相手にむやみに危険をすすめる言葉ではなく、引き受けるべき大事な場面で、弱気をしずめるための表現です。
同じ発想は、英語にもほぼ同じ形で出てきます。英語の “A man can die but once.” は、「人は一度しか死なない」という意味で、日本語の「一度死ねば二度は死なぬ」に対応する表現として扱われています。
この英語の言い方は、シェイクスピアの『Henry IV, Part II』にも出てきます。第3幕第2場で、徴兵される人物フィーブルが “A man can die but once: we owe a death.” と語り、死を避けられないものとして受け入れ、卑しい心を持たずに役目へ向かおうとします。
一方で、日本語の「一度死ねば二度死なぬ」は、日常のことわざとして、強い覚悟を表す形にまとまっています。「二度死なぬ」という言い切りがあるため、聞く人に、もう迷わないという強い決心を伝えます。
ただし、このことわざは「命を粗末にしてよい」という意味ではありません。反対の考え方として、「命あっての物種」は、何事も命があってこそできるもので、死んでは何にもならないと表します。二つを合わせて考えると、このことわざは、命の大切さを忘れずに、それでも逃げずに向き合うべき場面で使う言葉だと分かります。
「一度死ねば二度死なぬ」の使い方




「一度死ねば二度死なぬ」の例文
- 大事な試合の前、彼は一度死ねば二度死なぬと自分に言い聞かせてグラウンドに立った。
- 会社の再建を任された社長は、一度死ねば二度死なぬの覚悟で難しい交渉に臨んだ。
- 避難訓練の代表発表をこわがっていた弟は、一度死ねば二度死なぬと思って壇上に上がった。
- 親友に本当の気持ちを伝えるため、彼女は一度死ねば二度死なぬと心を決めた。
- 長く準備してきた研究発表で、先生は一度死ねば二度死なぬの気持ちで質問に答えた。
- 一度死ねば二度死なぬとはいっても、命に関わる危険を軽く見るための言葉ではない。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・山本忠尚監修、創元社編集部編『新版 日英比較ことわざ事典』創元社、2007年。
・William Shakespeare『Henry IV, Part II』。























