【ことわざ】
得手に鼻突く
【読み方】
えてにはなつく
【意味】
自分の得意なことだと気をゆるし、かえって失敗することのたとえ。


【英語】
・Pride comes goes before a fall(自信過剰は失敗を招く)
【類義語】
・過ちは好む所にあり(あやまちはこのむところにあり)
・泳ぎ上手は川で死ぬ(およぎじょうずはかわでしぬ)
・河童の川流れ(かっぱのかわながれ)
・猿も木から落ちる(さるもきからおちる)
「得手に鼻突く」の語源・由来
「得手」とは、巧みで得意とすること、または最も得意とするところを指します。「得手不得手」という言い方にも残るように、その人がうまくできる分野や、慣れている物事を表す言葉です。
一方、「鼻を突く」には、においが鼻を刺激するという意味のほかに、古くは「しくじる」「衝突する」といった意味もあります。このことわざでは、得意なことに向かって進みながら思わぬところで失敗する、という意味合いで理解すると分かりやすいです。
「得手に鼻突く」は、この二つの要素が結びついた言い方です。得意なことだから大丈夫だと思って気をゆるめた結果、かえって失敗するという、人の油断を戒めることわざです。
古い用例としては、江戸時代後期の俳文集『鶉衣』(うずらごろも)前編に「得てに鼻つくあやまち」という形が出てきます。『鶉衣』は横井也有の俳文集で、前編は天明7年(1787年)に刊行されました。
その用例では、気に入らない同僚を軽く扱うような高ぶりがもとで、得意なところで過ちをしでかす、という文脈になっています。ここでは、単に能力が足りなくて失敗するのではなく、自信や高ぶりが不注意を生む点が大切です。
古い表記では「得てに鼻つく」とかな交じりで書かれていますが、現在では「得手に鼻突く」という表記で示されることが多くなっています。「得て」は「得手」と同じく、得意とするものを表す言葉として働いています。
このことわざは、「河童の川流れ」や「猿も木から落ちる」と近い考え方をもっています。どちらも、その道にすぐれた者でも失敗することがある、という教えを表します。
ただし、「得手に鼻突く」は、名人でも失敗するというだけでなく、得意だからこそ気がゆるむという点を強く表します。慣れていることほど、ていねいに取り組まなければならないという戒めにつながることわざです。
「得手に鼻突く」の使い方




「得手に鼻突く」の例文
- 漢字が得意な兄は、油断して書き順をまちがえ、得手に鼻突く結果となった。
- 料理に慣れている母でも、火加減を見落として焦がしてしまい、得手に鼻突くことがある。
- 野球部の主将は守備に自信があったが、簡単な打球を落として得手に鼻突く思いをした。
- 長年この仕事をしている人ほど、得手に鼻突くことがないよう基本確認を怠らない。
- 英語が得意な友人は、問題文をよく読まずに答えてしまい、得手に鼻突く失敗をした。
- 発表に慣れているからと準備を省けば、得手に鼻突くことになりかねない。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・横井也有『鶉衣』前編、1787年。
・Cambridge Advanced Learner’s Dictionary & Thesaurus, Cambridge University Press.























