【ことわざ】
烏鷺の争い
【読み方】
うろのあらそい
【意味】
囲碁で勝負を争うこと。


【英語】
・a game of Go(囲碁の対局)
【類義語】
・手談(しゅだん)
「烏鷺の争い」の語源・由来
「烏鷺の争い」の「烏鷺(うろ)」は、烏(からす)と鷺(さぎ)を並べた言葉です。烏と鷺そのものを指すほか、烏の黒と鷺の白との対照から、「黒と白」という意味でも使われます。
囲碁では、二人の対局者が黒石と白石を盤上に交互に置き、自分の石で囲んだ場所の広さなどを競います。盤上で黒と白が向かい合うため、黒石を烏に、白石を鷺に見立てる言い方が生まれました。
この見立てでは、実際の烏と鷺が争っているのではありません。黒石と白石が盤上で入り交じり、互いに陣地を争う様子を、色の異なる二種類の鳥の勝負として表しています。
やがて、「烏鷺」だけでも、囲碁を表す異称として使われるようになりました。囲碁には、このほか、四角い盤と丸い石から生まれた「方円(ほうえん)」や、手を通して心を語り合うという意味の「手談」などの異称があります。
「烏鷺」という見立てがいつ生まれたかを、一つの出来事や人物に結び付けることはできません。黒と白の碁石を、それぞれ同じ色を代表する鳥になぞらえた、視覚的に分かりやすい表現として広まったものです。
江戸時代後期には、『烏鷺争飛集(うろそうひしゅう)』(1803年・江戸時代後期、鳥居寅忠著)が刊行されています。別名を『新選百番碁立』といい、本文には棋譜(きふ:囲碁の対局の手順を記したもの)が収められています。
この書名では、囲碁を表す「烏鷺」に、競いながら飛ぶことを表す「争飛」が続いています。黒石と白石が盤上でせめぎ合う様子を、黒い鳥と白い鳥が競う姿に重ねた、文学的な題名です。
また、江戸時代中期に活躍した浮世絵師・礒田湖龍斎には、「烏鷺の争い」という題で伝わる柱絵があります。少なくとも江戸時代には、現在と同じ形の表現が、作品の題にも用いられていたことが分かります。
石川啄木の『我等の一団と彼』(1910年執筆・1916年刊)には、「烏鷺の趣味を解した者」という言い方が出てきます。ここでの「烏鷺」は、烏と鷺を観察することではなく、囲碁の面白さを知ることを意味します。
このように、まず黒と白を表す「烏鷺」が囲碁の異称となり、そこへ勝負を意味する「争い」が加わって、「烏鷺の争い」という形が定着しました。現在も、囲碁を打つことや囲碁の対局を、やや風雅に言い表すときに用います。
「争い」といっても、激しい口論や武力による戦いを指す言葉ではありません。黒石と白石を通して知恵と技を競う、静かな盤上の勝負を表したことわざです。
「烏鷺の争い」の使い方




「烏鷺の争い」の例文
- 祖父と叔父は夕食を終えると、碁盤を挟んで烏鷺の争いを始めた。
- 囲碁大会の決勝では、二人の名手による烏鷺の争いが夜まで続いた。
- 旅館の広間では、宿泊客どうしの穏やかな烏鷺の争いが繰り広げられていた。
- 棋士の深い読みがぶつかり合う烏鷺の争いに、観戦者は息をのんだ。
- 昼休みになると、囲碁好きの社員たちは烏鷺の争いを楽しんだ。
- 少年は父との烏鷺の争いを重ねるうちに、少しずつ腕を上げていった。
主な参考文献
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・鳥居寅忠『烏鷺争飛集』菱屋久兵衛、1803年。
・礒田湖龍斎『烏鷺の争い』江戸時代。
・石川啄木『我等の一団と彼』東雲堂書店、1916年。























