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【石に立つ矢】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語・英語)

石に立つ矢

【故事成語】
石に立つ矢

【読み方】
いしにたつや

【意味】
一心を込めて物事に当たれば、不可能に思えることでも成し遂げられるというたとえ。強い思いや集中が、困難を打ち破ることを表す。

ことわざ博士
「石に立つ矢」は、単なる願望ではなく、心を一点に集中して真剣に取り組むことの力を表す故事成語なんだよ。
助手ねこ
困難な目標や大きな壁に向かって、あきらめずに力を尽くす場面に用いるニャン。

【英語】
・Where there’s a will, there’s a way(強い意志があれば、道は開ける)

【類義語】
・一念岩をも通す(いちねんいわをもとおす)
・一念天に通ず(いちねんてんにつうず)
・射石飲羽(せきせきいんう)
・精神一到何事か成らざらん(せいしんいっとうなにごとかならざらん)

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「石に立つ矢」の故事

故事成語を深掘り

「石に立つ矢」は、中国の古い話に由来する故事成語です。石のように堅いものに矢が立つという、ふつうでは起こりにくい出来事を通して、一心に取り組む力の大きさを表しています。

よく知られているもとの話は、『史記』(前漢、司馬遷著)の「李将軍列伝」に出てくる、漢の名将・李広(りこう)の逸話です。『史記』は人物の伝記を中心に歴史を記す形で編まれた中国の史書で、この話も李広の勇気と弓の腕を語る流れの中に置かれています。

李広は、北方の匈奴(きょうど)からも恐れられ、「漢の飛将軍」と呼ばれた人物です。右北平(ゆうほくへい)にいたとき、匈奴はその名を聞いて、何年もその地へ入り込もうとしなかったと伝えられています。

あるとき李広が狩りに出ると、草むらの中に虎のようなものが見えました。李広はそれを虎だと思い、力を込めて矢を放ちます。

矢は見事に当たりましたが、近づいてみると、それは虎ではなく石でした。しかも、矢じりは石に深く入り、見えなくなるほどだったと語られています。

李広は、もう一度同じ石を射てみました。しかし、今度はどれほど射ても、矢は前のように石へ入りませんでした。この点が、この故事の大切なところです。

つまり、ただ弓の技がすぐれていたという話ではありません。虎だと思い込んで全身の力と心を集中した一度の矢だからこそ、ふつうは貫けない石にまで矢が立った、という受け止め方につながっています。

同じ趣旨の話は、『漢書』(後漢、班固著)にも伝わっています。「草の中の石を虎と思って射たところ、矢が石に入り、後で射ても入らなかった」という形で、一念の力を表す故事として用いられてきました。

また、『韓詩外伝(かんしがいでん)』巻六には、楚の熊渠子(ゆうきょし)が夜道で大きな石を伏せた虎と見誤り、力を尽くして矢を射たところ、矢の羽まで石に深く入ったという近い話が伝わっています。ここから「射石飲羽」という表現も生まれました。

日本語では、「石に立つ矢」のほかに、「虎と見て射る矢の石に立つ」という形でも伝わりました。この形は、石を虎と見て射た矢が石に立つという場面を、よりそのまま言い表したものです。

日本での古い用例としては、謡曲『恋重荷(こいのおもに)』(1423年ごろ、室町時代)に、「虎と思へば石にだに立つ矢のあるぞかし」という趣旨の表現が出てきます。ここでは、中国の故事が、強い思いの通じるたとえとして受け入れられていたことがうかがえます。

この故事成語は、努力すれば何でも簡単にかなう、という軽い意味ではありません。心を集中し、全力で困難に向き合うとき、ふつうなら届かないところにまで力が及ぶという考えを表します。

現在では、受験、研究、練習、仕事、創作など、長く難しい取り組みに向かうときに用いられます。「石に立つ矢」は、強い一念が困難を動かすという、古くから大切にされてきた考えを今に伝える故事成語です。

「石に立つ矢」の使い方

健太
市の作文コンクール、何度書き直しても、ぼくの伝えたいことがうまくまとまらないんだ。
ともこ
でも、健太くんはおじいさんとの思い出を本気で書きたいんでしょう? 石に立つ矢というし、最後まで向き合えば言葉が見つかるよ。
健太
そうだね。今日は遊びに行くのをやめて、もう一度、病院で話した日のことから書き直してみるよ!
ともこ
その気持ちなら、きっと読む人に届くよ。力を出し切った文章にしよう。
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「石に立つ矢」の例文

例文
  • 全国大会を目指して毎朝の練習を続けた彼の姿は、まさに石に立つ矢だった。
  • 失敗しても研究をやめなかった先生の努力に、石に立つ矢の精神を感じた。
  • 苦手な数学を克服するために一年間問題集に向き合い、石に立つ矢の思いで合格をつかんだ。
  • 町の人々は石に立つ矢の気持ちで交渉を続け、古い図書館の保存を実現した。
  • 祖母は石に立つ矢の一念でリハビリに励み、もう一度自分の足で庭を歩いた。
  • 石に立つ矢という言葉の通り、強い決意と集中が困難な計画を前へ進めた。

主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『デジタル大辞泉』小学館。
・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・公益財団法人日本漢字能力検定協会『漢字ペディア』。
・司馬遷『史記』前漢。
・劉向編『韓詩外伝』前漢。
・班固『漢書』後漢。





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