【ことわざ】
鬼の女房に鬼神がなる
【読み方】
おにのにょうぼうにきじんがなる
【意味】
鬼のように恐ろしい容貌・心・行いの男には、それにふさわしい同じような女が妻になるということ。似た者夫婦をいう。


【英語】
・Birds of a feather flock together(似た性質の者どうしは一緒になる)
【類義語】
・似た者夫婦(にたものふうふ)
・破れ鍋に綴じ蓋(われなべにとじぶた)
「鬼の女房に鬼神がなる」の語源・由来
「鬼の女房に鬼神がなる」は、鬼のように恐ろしく、心や行いのよくない男には、同じように恐ろしい女が妻になるという意味から生まれたことわざです。夫婦となる二人は、性質や振る舞いの面でも釣り合った者どうしになるという考えを、鬼と鬼神の組合せによって表しています。
ここでいう「鬼」は、昔話などに登場する怪物だけを指すのではありません。人に情けをかけず、冷酷で恐ろしい人を鬼にたとえる用法をもとにしています。一方、「鬼神(きじん)」は、荒々しく恐ろしい神や化け物を表す言葉です。このことわざでは、鬼に見合うほど恐ろしい存在として、妻となる女を「鬼神」にたとえています。
「鬼の女房に鬼神がなる」という文の「なる」は、「鬼神が鬼の女房になる」という関係を表します。つまり、「鬼のような男の妻には、鬼神のような女がなる」という意味です。「女房」は、ここでは妻を指す古くからの言い方であり、現代語の語順に直すと、ことわざの仕組みが分かりやすくなります。
古い用例は、『毛吹草(けふきぐさ)』(1638年序・江戸時代前期、松江重頼編)の第二巻にあります。原文には、「おにのにうばうに鬼神(キジン)がなる」と記されています。現在の表記とは仮名遣いが異なりますが、「鬼の女房に鬼神がなる」という言い回しは、すでにこの時代に成立していました。
『毛吹草』は、全七巻からなる俳諧(はいかい)の書物で、俳諧の決まりや、句を作る際に役立つ言葉などを収めています。現在まで伝わる多くの古いことわざについても、この書物の用例によって、江戸時代前期の姿を知ることができます。
『毛吹草』の「にうばう」は、現在の「にょうぼう」に当たる古い仮名遣いです。また、「鬼神」には、「キジン」と読みが添えられています。このため、このことわざでは、「鬼神」を「おにがみ」や「きしん」ではなく、「きじん」と読むことが分かります。
このことわざは、特定の鬼夫婦の出来事を詳しく語るものではありません。「鬼」と「鬼神」という、似通った恐ろしい存在を夫婦として取り合わせることで、性質の似た者どうしが結び付くという世間の見方を、短く印象深く表しています。
同じ考えを穏やかに表す言葉が、「似た者夫婦」です。また、「破れ鍋に綴じ蓋」も、どのような人にもそれにふさわしい伴侶があり、夫婦は似通った者どうしになることを表します。ただし、「鬼の女房に鬼神がなる」は、二人の悪い性質や行いが似ていることを、特に強く非難する表現です。
もとの意味には、容貌についての厳しい評価も含まれますが、現代では、人の外見をあざけるために使うのは適切ではありません。用いる場合は、不正や意地悪など、夫婦の好ましくない性質や行動がよく似ていることを指す表現として受け取るのがよいでしょう。
「鬼の女房に鬼神がなる」の使い方




「鬼の女房に鬼神がなる」の例文
- 客をだましていた宿屋の夫婦は、まさに鬼の女房に鬼神がなるという言葉どおりだった。
- 夫が人の功績を横取りすれば、妻も平気でうそをつき、鬼の女房に鬼神がなるとはこの二人のことだった。
- 近所の人を困らせることばかり考える夫婦を見て、皆は鬼の女房に鬼神がなるとあきれた。
- 強欲な主人と冷酷な妻の振る舞いは、鬼の女房に鬼神がなるということわざを思わせた。
- 二人とも部下の失敗を押し付け合うような経営者夫婦で、鬼の女房に鬼神がなると陰で評された。
- 物語に登場する悪役夫婦は互いに意地が悪く、鬼の女房に鬼神がなるを絵に描いたようだった。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・松江重頼編『毛吹草』1638年序。
・Cambridge University Press『Cambridge Advanced Learner’s Dictionary & Thesaurus』。























