【ことわざ】
瓜の蔓に茄子はならぬ
【読み方】
うりのつるになすびはならぬ
【意味】
ある原因からは、それに応じた結果しか生じず、子は親の性質を受け継いで似るものだというたとえ。とくに、平凡な親から非凡な子は生まれないという意味で用いる。


【英語】
・The apple never falls far from the tree(リンゴの実は木から遠く離れた所には落ちない)
【類義語】
・蛙の子は蛙(かえるのこはかえる)
【対義語】
・鳶が鷹を生む(とびがたかをうむ)
「瓜の蔓に茄子はならぬ」の語源・由来
「瓜の蔓に茄子はならぬ」は、瓜の蔓(つる)からは瓜が実り、種類の異なる茄子(なすび)が実ることはないという、植物の生育の道理をたとえにしたことわざです。原因が同じなら、それに応じた結果が生じるという考えを表しています。
このたとえは、とくに親子の関係について用いられてきました。瓜を親、そこに実るものを子に見立て、子どもの性質や傾向は親に似るものであり、血筋は争えないという意味を表します。
現在の意味には、単に親子が似るというだけでなく、「平凡な親から非凡な子は生まれない」という、やや厳しい見方も含まれています。そのため、ほかの家の親子について用いると、相手の能力を低く見る言葉になりやすく、使う場面には注意が必要です。
この表現の古い用例は、狂言(きょうげん)『比丘貞(びくさだ)』(室町時代末期から近世初期)にあります。ことわざの古例を収める波形本は、天明6年(1786年)ごろ、早川幸八によって書写された和泉流の狂言台本です。
『比丘貞』は、成人した一人息子に名をつけてもらうため、家の者が老尼(ろうに)を訪ねる狂言です。老尼は、自分の住まいが「お庵」と呼ばれていることから、息子を「庵太郎」と名づけ、さらに「比丘尼」の「比丘」と、その家で代々用いる「貞」を合わせて「比丘貞」と名づけます。
この作品には、「瓜のつるになすはならぬと云ふ」とあります。そのあとには、名をつけられた貞も父に似て酒好きになるだろうという言葉が続き、親の性質が子へ受け継がれることを表すために、このたとえが使われています。
古い用例では、「茄子」を「なす」と読ませ、「瓜のつるになすはならぬ」という形になっています。現在は「茄子」を「なすび」と読み、「瓜の蔓に茄子はならぬ」という形が一般的ですが、親に似た子が生まれるという意味は変わっていません。
「ならぬ」は、ここでは「実らない」「生じない」という意味です。瓜の蔓に別の植物の実を期待してもかなわないという当然の事実から、原因と無関係な結果を望んでも得られないという、より広い意味にも用いられるようになりました。
よく似たことわざの「蛙の子は蛙」も、子は親に似て、親と同じような道を歩むものだという意味を表します。一方、「鳶が鷹を生む」は、平凡な親から優れた子が生まれることを表し、「瓜の蔓に茄子はならぬ」とは反対の考え方を示します。
近代以降も、このことわざは、親子の性質を語る表現として使われています。田辺聖子の『夕ごはんたべた?』(昭和50年、田辺聖子著)では、真面目で正直な親の性質を子どもたちが受け継いでいないことをいぶかる文脈で用いられています。
この用例は、ことわざが常に「親子は必ず似る」と断定するためだけに使われるのではなく、予想に反して似なかった場合にも、皮肉や疑問を込めて引かれることを示しています。決まった見方を示すことわざだからこそ、現実との違いを際立たせる働きもあります。
「瓜の蔓に茄子はならぬ」は、植物がそれぞれの種類に従って実を結ぶことを、人間の親子や物事の原因と結果に重ねた表現です。親子の似通った性質をいうとともに、もとの原因からかけ離れた結果を期待しても得られないという、暮らしの中の道理を伝えています。
「瓜の蔓に茄子はならぬ」の使い方




「瓜の蔓に茄子はならぬ」の例文
- 父親と同じく朝寝坊の息子を見て、母は瓜の蔓に茄子はならぬと苦笑した。
- 自分も数学が苦手だった父は、息子の答案を見て、瓜の蔓に茄子はならぬとつぶやいた。
- 彼の頑固な性格は祖父によく似ており、瓜の蔓に茄子はならぬと親戚から言われている。
- 平凡な自分の子に過大な期待を寄せるべきではないと、彼女は瓜の蔓に茄子はならぬを引き合いに出した。
- 代々商人を続けてきた家の息子が店を継ぎ、近所の人は瓜の蔓に茄子はならぬと話した。
- 瓜の蔓に茄子はならぬというが、親に似ているという理由だけで子どもの可能性まで決めつけてはならない。
主な参考文献
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・公益財団法人日本漢字能力検定協会編『漢検 漢字辞典 第二版』日本漢字能力検定協会、2014年。
・早川幸八書写『波形本』1786年ごろ。
・田辺聖子『夕ごはんたべた?』新潮社、1975年。























