【ことわざ】
悪人には友多し
【読み方】
あくにんにはともおおし
【意味】
悪い人ほど口がうまく、利を見せて人を引きつけるため、取り巻きや仲間が多くなりやすいこと。周りに人が多いからといって、その人が善いとは限らないという戒めもこもる。


【英語】
・Birds of a feather flock together.(似た者どうしは集まりやすい)
・Bad company corrupts good morals.(悪い仲間づきあいは人を悪くする)
【類義語】
・類は友を呼ぶ(るいはともをよぶ)
・善悪は友による(ぜんあくはともによる)
・臭い物に蠅がたかる(くさいものにはえがたかる)
【対義語】
・悪人の友を捨てて善人の敵を招け(あくにんのともをすててぜんにんのてきをまねけ)
・麻に連るる蓬(あさにつるるよもぎ)
「悪人には友多し」の語源・由来
このことわざは、特定の一つの事件や人物の話からそのまま生まれたものではなく、人づきあいについての世間の観察が短く言い表された日本のことわざです。したがって、故事成語のように、まず元の物語をたどって理解するタイプの言葉ではありません。
言葉の形はたいへん分かりやすくできています。悪い行いをする人を「悪人」と呼び、そのような人のまわりには「友」が多い、と言い切る形で、人の集まり方の危うさを強く印象づけています。
ここでいう「友」は、心から信頼し合う親友だけを指すとは限りません。利益を当てにして近づく者、悪事をいっしょに行う仲間、その場の得のために付き従う取り巻きまで含んだ、広い意味の「仲間」と受け取るのが自然です。
このことわざの背景には、昔から日本で大切にされてきた、交わる相手によって人は善くも悪くもなるという考えがあります。友だちや仲間は、その人の行いにも心の向きにも、大きな影響を与えるものだと考えられてきました。
その考えがよく表れている古いことわざに「善悪は友による」があります。これは、1579年(天正7年・安土桃山時代)の『紹三問答』に、道を学ぶにも善い友と悪い友が大きく関わる、という趣旨で書かれており、友との交わりが人を形づくるという見方の古さを教えてくれます。
また、「朱に交われば赤くなる」や「麻に連るる蓬」のように、周りのものに染まり、感化されるという言い方も古くから広く親しまれてきました。こうしたことわざ群は、友や環境が人に及ぼす力を、分かりやすいたとえで伝えるものです。
その中で「悪人には友多し」は、ただ人が周りに影響されるというだけでなく、悪いことをする者の側が、ことさらに人を集めやすいという点に目を向けています。口先のうまさ、目先の利益、気軽さ、規則を破る楽しさのようなものが、人を引き寄せる力になるという、少しきびしい人間観察が、このことわざには込められています。
このため、このことわざは、善人と悪人の人数を比べる言葉ではありません。悪いことをする者のまわりには、一時的に人が集まりやすく、見かけの人気や勢いにだまされやすい、という点を言い当てた言葉です。
はっきりした一つの初出を示して、この本から生まれたと言い切るのはむずかしいことわざです。しかし、友人関係や交わりの善悪を重んじる古い教えの流れの中で、世間の実感を短く鋭く言い表す形として定着してきたと考えるのが、いちばん自然です。
江戸時代以後、ことわざは庶民の暮らしの中で、教訓としても、人を見る目を養う言葉としても広く用いられました。このことわざも、ただ悪人をののしるためではなく、人数の多さやにぎやかさに引かれて判断を誤らないようにするための戒めとして受け取られてきたのでしょう。
今でもこのことわざは、人を悪事へ誘う者のまわりに仲間が集まる場面や、人気があるように見えても中身は信用できない場面で使われます。見た目の勢いではなく、していることの正しさを見ることが大切だという教えが、短い言葉の中にはっきり残っているのです。
「悪人には友多し」の使い方




「悪人には友多し」の例文
- 休み時間のいたずらを持ちかける上級生のまわりに人が集まり、悪人には友多しという言葉を思わせた。
- 利益ばかり約束する悪質な勧誘に仲間が次々集まる様子は、悪人には友多しの一例だ。
- うそを重ねる人ほど取り巻きが多いのを見て、祖父は悪人には友多しだとつぶやいた。
- 不正を知りながら付き従う人が多い組織を見ると、悪人には友多しということわざの重みを感じる。
- ずるい方法で得をさせると約束すると人が集まるので、悪人には友多しとはよく言ったものだ。
- 表向きの人当たりのよさだけで人気者を信じこむと、悪人には友多しという場面にのみこまれかねない。























