【故事成語】
悪に従うは崩るるが如し
【読み方】
あくにしたがうはくずるるがごとし
【意味】
悪い行いのほうへ流れることはきわめてたやすく、ひとたび身を任せると転落は早いということ。


【英語】
・doing good is like a hard climb, doing evil is like an easy fall(善は登るようにむずかしく、悪は落ちるようにたやすい)
・It is easier to do wrong than to do right.(正しいことより悪いことのほうがしやすい)
【類義語】
・朱に交われば赤くなる(しゅにまじわればあかくなる)
・悪事千里を走る(あくじせんりをはしる)
【対義語】
・善に従うは登るが如し(ぜんにしたがうはのぼるがごとし)
・積善の家には余慶あり(しゃくぜんのいえにはよけいあり)
・徳は孤ならず必ず隣あり(とくはこならずかならずとなりあり)
「悪に従うは崩るるが如し」の故事
この故事成語は、もともと「善に従うは登るが如く、悪に従うは崩るるが如し」という対の形で伝わる言葉の後ろ半分です。日本語では後ろ半分だけを取り出して、悪へ流れるたやすさを強く言う形でも使われます。
元になった言葉は、中国の古典『国語(こくご)』の「周語下」に出てきます。そこではこの句がすでに《諺》として引かれており、当時から広く知られた言いならわしだったことが分かります。
話の背景には、周の王室が長く乱れ、国を立て直すことがきわめて難しくなっていた事情があります。成周を支え直そうとする動きが起こりますが、それが本当に可能かどうかが重く問われる場面でした。
その中で、衛の大夫の彪傒が周に来て、単穆公に向かって意見を述べます。そこで引いたのが「善に従うは登るが如く、悪に従うは崩るるが如し」という古い言葉でした。
「登る」は、善へ向かう道が山登りのように一歩ずつで、時間も力も要ることをたとえています。これに対して「崩るる」は、悪へ傾くと、山崩れのように速く大きく落ちていくことを表しています。
『国語』の本文は、この言葉のあとに、夏・殷・周の盛衰を続けて挙げます。善いはたらきで国が興るには長い世代の積み重ねが必要なのに、乱れによる滅びは思いのほか早いという考えを、歴代の例によって示しているのです。
この句は、後の時代にもくり返し引かれました。『三国志(さんごくし)』の張紘伝では、張紘が孫権に残した文章の中でこの言葉を引き、人は難しい善よりも、楽で迎合しやすい悪へ流れやすいと説いています。
さらに、後の教訓書にも「從善如登、從惡如崩」の形で受けつがれます。長く読み継がれる中で、善を積む難しさと、悪へ落ちる速さを言う代表的な言い方になっていきました。
日本語の「悪に従うは崩るるが如し」は、この対句の後半を取り出した形です。前半を省いても意味が通るのは、「悪へ流れるのはたやすい」という教えが、それだけ強く心に残るからです。
そのため、この故事成語は、ただ悪を責めるだけの言葉ではありません。ずる、うそ、ごまかしのように、楽だからと選びたくなる行いほど足もとを崩しやすいと戒める、古くて今も鋭い教えとして受け止められています。
「悪に従うは崩るるが如し」の使い方




「悪に従うは崩るるが如し」の例文
- テスト前に答えを見たくなったとき、悪に従うは崩るるが如しという言葉を思い出して手を止めた。
- 小さなうそでその場を逃れようとしたが、悪に従うは崩るるが如しと思い、父に本当のことを話した。
- 友だちの悪口に合わせて笑うのは、悪に従うは崩るるが如しのたとえどおり、あっという間に心が乱れる。
- 係の仕事をさぼって人任せにすると、悪に従うは崩るるが如しで、学級全体の空気までゆるむ。
- 会社でも、経費のごまかしは悪に従うは崩るるが如しで、一度許すと次の不正につながりやすい。
- 社会の決まりを軽く破る態度が広がるのは、悪に従うは崩るるが如しという教えを思わせる。























