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【家其の所に足る者は、聖人に従わず】の意味と使い方や例文!故事は?

家其の所に足る者は、聖人に従わず

【故事成語】
家其の所に足る者は、聖人に従わず

【読み方】
いえそのところにたるものは、せいじんにしたがわず

【意味】
一家の暮らしが自力で十分に成り立っていれば、どれほどすぐれた治者にも従おうとしないこと。生活の支えを自分で持つ者は、権威や利益によって動かされにくいことをいう。

ことわざ博士
「家其の所に足る者は、聖人に従わず」は、暮らしに不足のない者は、すぐれた人物にも頼らず、支配されにくいという考えを表しているよ。
助手ねこ
自分の生活が足りていて、利益を示されても命令に動かされない人や集団について用いるニャン。
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「家其の所に足る者は、聖人に従わず」の故事

故事成語を深掘り

この言葉は、中国古代の思想書『管子(かんし)』の「軽重乙」に記された「家足其所者、不從聖人」を、日本語の形に読み下したものです。『管子』は、斉(せい)の名臣である管仲(かんちゅう)に結び付けて伝えられてきた書物で、政治や経済についての考えを数多く収めています。「軽重乙」は、桓公(かんこう)と管子との問答という形で、国を治める者が食糧や財貨をどのように扱うかを論じる篇です。

「軽重乙」では、この言葉の前に、雨や水が十分で穀物が豊かになり、人々が食糧を蓄えて上に頼らなくなるなら、君主の命令は行き届きにくくなる、という趣旨が述べられます。続いて、霜や露に耐えられる木は天の命令を受けない、とたとえられ、そのすぐ後に「家足其所者、不從聖人」と続きます。

ここでいう「家」は、一つ一つの家や暮らしの単位を指します。「足其所」は、その家が必要とする財や食糧を十分に持つことです。また、「聖人」は、単に立派な先生という意味ではなく、国を治める理想的な人物を指しています。したがって、この一節は、暮らしに必要なものを自分で十分に持つ家は、どれほどすぐれた治者であっても、思いどおりに従わせることができない、という意味になります。

この前後の流れから分かるように、もとの文脈は、満足すると学ぶ心を失うという教えではありません。人々が食糧や財を十分に持ち、君主から与えられる利益を必要としなければ、命令や恩賞によって動かすことが難しくなる、という政治と経済の見方を述べています。

そのため、「軽重乙」は、この言葉の後で、治者が人々に物を与える前に、まず財や穀物の動きを自分のもとに集め、物の値段を上げ下げし、褒賞や救済を通じて人々を動かすという議論へ進みます。現代の目で読むと厳しい考え方ですが、ここでは、生活の基盤を持つ者は、外からの利益だけでは容易に従わないという点が、はっきりと示されています。

同じ『管子』の「侈靡」には、これと近い形で、「士能自治者、不從聖人」と記されています。これは、自分を治める力のある者は聖人にも従わない、という意味で、政治的な自立に重きを置いた言い方です。それに対して、「軽重乙」の「家足其所者」は、家の財や食糧が足りていることを述べており、暮らしの面で自立している者の強さを表しています。

日本語では、原文の「家足其所者、不從聖人」に助詞を補い、「家其の所に足る者は、聖人に従わず」と読まれています。「其の所に足る」とは、自分の暮らしに必要なものが備わっていることです。この言葉は、自立した者は権威にむやみに頼らず、利益を示されただけで簡単には動かされない、という意味で受け取ることができます。

「家其の所に足る者は、聖人に従わず」の使い方

健太
秋まつりの店を出すのに、別の班が道具を貸す代わりに、全部その班の決めた通りにしようと言っているんだ。
ともこ
でも、わたしたちの班は道具も材料もそろえてあるよ。無理に言いなりになる必要はないね!
健太
家其の所に足る者は、聖人に従わずという通り、自分たちで足りていれば、条件を出されても動かされにくいんだね。
ともこ
それなら、みんなで相談して、本当に作りたいお店にしよう。
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「家其の所に足る者は、聖人に従わず」の例文

例文
  • 必要な材料を自前でそろえた工房は、取引先の無理な条件を退け、家其の所に足る者は、聖人に従わずを思わせた。
  • 十分な食糧を蓄えた村が権力者の援助に頼らず判断した姿は、家其の所に足る者は、聖人に従わずの趣を示す。
  • 生活の基盤を自分で築いた彼は、利益をちらつかされても屈せず、家其の所に足る者は、聖人に従わずを体現した。
  • 一社の資金だけに頼らず事業を続けた会社の選択は、家其の所に足る者は、聖人に従わずの考えに通じる。
  • 災害への備えを整えた地域は、不利な交換条件に急いで従わず、家其の所に足る者は、聖人に従わずという言葉にかなう姿を示した。
  • 自立した生活を守ろうとする家族の決断を、祖父は家其の所に足る者は、聖人に従わずという言葉で語った。

主な参考文献
・遠藤哲夫著『新釈漢文大系52 管子 下』明治書院、1992年。
・馬非百撰『管子輕重篇新詮』中華書局、1979年。
・高田哲太郎「『管子』の「道」について」『中国研究集刊』第53号、2011年。





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