【ことわざ】
意見三両、堪忍五両
【読み方】
いけんさんりょう、かんにんごりょう
【意味】
人にきびしく言うことにも値打ちはあるが、それよりも堪え忍ぶことのほうが、いっそう大切であるということ。とっさに言い返すより、まず心をおさえるほうがまさるという教え。


【英語】
・Patience is worth more than argument(言い争うより堪える方が大切だ)
・Restraint is more valuable than reproach(きびしく言うより自分を抑える方が価値がある)
・A calm heart is worth more than a sharp tongue(強い言葉より落ち着いた心の方が尊い)
【類義語】
・堪忍は無事長久の基(かんにんはぶじちょうきゅうのもと)
・短気は損気(たんきはそんき)
・負けるが勝ち(まけるがかち)
【対義語】
・売り言葉に買い言葉(うりことばにかいことば)
・短気短慮(たんきたんりょ)
・血気にはやる(けっきにはやる)
「意見三両、堪忍五両」の語源・由来
「意見三両、堪忍五両」は、江戸時代の金の単位である「両」を使って、人のふるまいの値打ちをたとえたことわざです。文字どおりに見れば、意見することは三両、堪忍することは五両の価値がある、という言い方です。
ここでいう「意見」は、今の「自分の考え」という意味だけではありません。相手をいさめたり、言い聞かせたり、ときにはきびしく言ったりすることまで含む、少し広い意味で使われています。
それに対して「堪忍」は、ただ黙って我慢することではありません。腹が立ってもすぐに言い返さず、場をこわさないように自分の心をおさえることを指しています。
このことわざのおもしろいところは、意見にも値打ちがあると、まず認めている点です。正しいことを言うのは無意味ではないけれど、それでもなお堪忍のほうを上に置いています。
なぜそうなるかというと、強い言葉は相手を動かす前に、まず争いを大きくしやすいからです。言うべきことが正しくても、怒りの勢いがまじると、関係そのものがこじれてしまうことがあります。
そのため、このことわざは「何も言うな」という教えではありません。言う前に一度こらえ、どんな言い方なら相手にも届くかを考えることのほうが、さらに大事だと教えています。
「三両」「五両」という数字は、実際の売り買いの値段を示すものではなく、重みを分かりやすくするためのたとえです。お金で表すことで、聞いた人に、どちらがより値打ちがあるかをはっきり感じさせる工夫になっています。
江戸時代には、このことわざのように「両」を入れて教えを語る言い方がほかにもありました。たとえば「堪忍五両思案十両」という近い言い回しもあり、町人の暮らしの中で、金額を使って教訓を覚えやすくする工夫が親しまれていたことが分かります。
このことわざは、武勇や勢いをほめるのではなく、心の持ち方を重んじています。外に向かって強く出るよりも、まず自分の怒りをしずめるほうが、結果として大きな損を防ぐ、という考え方です。
だから、親子、友だち、仕事仲間など、人と人とが向き合う場面で長く使われてきました。相手のまちがいを見つけたときほど、このことわざの重みが出てきます。
今の生活でも、すぐに言い返せる場面はたくさんあります。けれども、言い返したあとで気まずさだけが残ることも多いため、このことわざは今でも古びません。
つまり「意見三両、堪忍五両」は、正しさを振りかざす前に、まず自分の心をおさえることの大切さを伝えることわざです。人を動かす言葉より先に、自分を整える力を大事にしなさいという、やわらかくも深い教えが、この短い言い方の中にこめられています。
「意見三両、堪忍五両」の使い方




「意見三両、堪忍五両」の例文
- 弟が花びんを割ったとき、母は意見三両、堪忍五両を思い出して、まずけががないかを確かめた。
- 会議で反対意見をすぐ強い口調で返す前に、意見三両、堪忍五両の心がけを持ちたい。
- 友だちの言い方に腹が立っても、意見三両、堪忍五両と考えて、その場では言葉をのみこんだ。
- 店先で客の勘違いに気づいた父は、意見三両、堪忍五両と言って声の調子をやわらげた。
- 部活動で後輩の失敗を見た先輩が、意見三両、堪忍五両を忘れずに静かに教え直した。
- 地域の集まりでは、意見三両、堪忍五両の気持ちがないと、ちょっとした行き違いでも話がまとまりにくい。























