【ことわざ】
一種二肥三作り
【読み方】
いちたねにこえさんつくり
【意味】
よい農作物を作るためには、第一によい種を選び、第二に適切な肥料を施し、第三に手入れや管理をよくすることが大切だという心得。


【英語】
・Good seed makes a good crop(よい種はよい作物を生む)
【類義語】
・苗半作(なえはんさく)
「一種二肥三作り」の語源・由来
「一種二肥三作り」は、農作物をよく育てるための順序を、数字で分かりやすく示したことわざです。「一種」は「第一に種」、「二肥」は「第二に肥料」、「三作り」は「第三に作り方・手入れ」を表します。よい作物を得るには、まずよい種を選び、次に作物に合った肥料を施し、さらに水や草取り、病害虫への注意などの管理を丁寧に行うことが大切だという意味です。
このことわざは、中国の古い故事に由来するものではなく、日本の農業の経験から生まれた教訓として受け止められています。農業の言い伝えを扱う文章にも、「一種二肥三作り」は、よい種をまき、適切な施肥と管理を行うことが大切だという農家の心得として挙げられています。
「一種」が第一に置かれているのは、種が作物の出発点だからです。昔の農家では、よく実った稲や作物の中から次の年に使う種を選び、種籾(たねもみ)や種子を大切に残してきました。よい肥料を与え、手入れを重ねても、もとの種が弱ければ、作物の力を十分に引き出すことはできません。そのため、このことわざは、作物づくりの最初の判断を非常に重く見ています。
「二肥」は、肥料をただ多く与えればよいという意味ではありません。作物や土の状態に合った肥料を施し、土づくりを整えることを指します。農作物は土の中の養分や水分を受けて育つため、種をまいた後の環境を整えることが、収量や品質につながります。この点で、「二肥」は、種の力を支える土台づくりを表す言葉です。
「三作り」は、種と肥料だけでは終わらない日々の作業を指します。水の管理、草取り、間引き、病害虫への注意、天候に応じた手入れなど、作物の成長を見ながら行う細かな世話がここに含まれます。ことわざの「作り」は、単に植えることではなく、収穫まで責任をもって育てることを含む広い言い方です。
近い考え方に「苗半作」があります。これは、よい苗を育てることは収量の半分が保障されたようなものだ、という農業の言い方です。苗の良し悪しが植えつけ後の生育や収量を左右するため、育苗中の管理が重んじられてきました。「一種二肥三作り」も「苗半作」も、農作業では初めの準備と育て始めの段階が大きな意味をもつ、という共通した考えを表しています。
また、現代の農業をめぐる本の中にも、「一種二肥三作り」を掲げて、種苗(しゅびょう:種と苗)に果たす農家の役割を考える章が置かれています。これは、このことわざが古い言い伝えにとどまらず、種を選ぶこと、苗を扱うこと、作物を育てることの関係を考える言葉として、今も農業の現場で意味を持っていることを示しています。
このように、「一種二肥三作り」は、作物の出来を偶然まかせにせず、よい種、よい土づくり、よい管理という三つの段階で考えることわざです。そこには、結果だけを急がず、始まりを整え、途中の手間を惜しまないことが、よい実りにつながるという、農業から生まれた落ち着いた知恵があります。
「一種二肥三作り」の使い方




「一種二肥三作り」の例文
- 祖父は野菜作りで、一種二肥三作りを守り、種選びから手を抜かなかった。
- よい米を育てるには、一種二肥三作りの考え方で、種籾と土づくりを大切にする必要がある。
- 家庭菜園でも、一種二肥三作りを意識すれば、発芽から収穫までの見通しが立てやすい。
- 新しい花壇づくりでは、一種二肥三作りのように、苗や土や日々の手入れを順に整えた。
- 仕事の計画も、一種二肥三作りと同じで、よい材料と準備と管理が結果を左右する。
- 一種二肥三作りを軽んじて種を適当に選んだため、畑の作物はそろって育たなかった。
主な参考文献
・北村孝一編『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・加藤周一編集長『世界大百科事典 改訂新版』平凡社、2007年。
・農文協編『どう考える? 種苗法 タネと苗の未来のために』農山漁村文化協会、2020年。























