【ことわざ】
怨みほど恩を思え
【読み方】
うらみほどおんをおもえ
【意味】
恨みをなかなか忘れないのと同じように、人から受けた恩も忘れずに心に留めよという教え。


【英語】
・Never forget a kindness(受けた親切を決して忘れるな)
【類義語】
・犬は三日飼えば三年恩を忘れぬ(いぬはみっかかえばさんねんおんをわすれぬ)
【対義語】
・恩を仇で返す(おんをあだでかえす)
「怨みほど恩を思え」の語源・由来
「怨みほど恩を思え」は、人から受けた嫌な仕打ちはいつまでも覚えているのに、受けた親切や助けは忘れやすいという、人の心の傾向を戒めたことわざです。恨みを記憶するのと同じほど強く、恩も心に留めておくよう勧めています。
このことわざは、「怨み」と「恩」という反対の性質をもつものを並べ、その間を「ほど」で結んでいます。短い言葉の中で、人が忘れにくいものと、忘れてはならないものとを対照させた言い方です。
「うらみ」は、一般には「恨み」と書きますが、「怨み」と表すこともあります。人から受けた仕打ちを不満に思い、その相手を憎む気持ちを指し、「怨み」の字は、とくに強く深い憎しみを表す場合にも使われます。
このことわざが「怨み」を持ち出すのは、恨むことを勧めるためではありません。人は不快な出来事を繰り返し思い出しやすいのだから、それに劣らないほど、人から受けた善意も忘れないようにせよと説いています。
一方の「恩」は、人から受けた、感謝すべき恵みや情けを指します。親に育ててもらったこと、困ったときに友人に助けてもらったこと、先生から大切なことを教わったことなどが、ここでいう恩に当たります。
「恩」という言葉は、日本では『続日本紀(しょくにほんぎ)』(797年成立、平安時代初期、菅野真道ほか編)が引用する721年の記事に、すでに用例があります。『源氏物語(げんじものがたり)』(11世紀初めごろ成立、平安時代中期、紫式部著)の「帚木(ははきぎ)」にも、「いまにそのおんはわすれ侍らねど」とあり、受けた恩を忘れないという考えが、古くから言葉に表されていました。
ただし、これらは「恩」という言葉の古い用例であり、「怨みほど恩を思え」ということわざ全体の用例ではありません。このことわざは、古くから大切にされてきた「恩を忘れない」という教えを、恨みとの対比によって強く印象づける形になっています。
末尾の「思え」は、「思う」の命令形です。ここでの「思う」は、一時的に思い出すだけでなく、受けた恩を心に留め、忘れずに大切にするという意味を担っています。
また、「ほど」は、物事の程度を表す言葉です。そのため、「怨みほど恩を思え」は、恨みよりも恩を軽く扱うのではなく、恨みを記憶するのと同じ程度に、恩も深く覚えておくよう求める言い方になります。
よく似た「怨みに報ゆるに徳を以てす」は、自分に害を与えた相手に仕返しをせず、善意をもって接することを表します。それに対して、「怨みほど恩を思え」は、相手への接し方よりも、受けた恩を忘れない心構えに重点を置いています。
「犬は三日飼えば三年恩を忘れぬ」も、恩を長く覚えておくことの大切さに通じることわざです。犬でさえ受けた恩を忘れないのだから、人はなおさら恩を大切にすべきだという教えを含んでいます。
現在は「恨みほど恩を思え」の表記が広く用いられますが、「怨みほど恩を思え」とも書きます。どちらの表記でも、嫌な記憶ばかりを大きくせず、自分を支えてくれた人の親切や情けを、いつまでも忘れないようにするという教えを表します。
「怨みほど恩を思え」の使い方




「怨みほど恩を思え」の例文
- 祖父は、つらい出来事ばかりを数えず、怨みほど恩を思えと孫たちに教えた。
- 怨みほど恩を思えという言葉を胸に、彼は苦しい時期に支えてくれた友人への感謝を忘れなかった。
- 家族への不満が募ったとき、私は怨みほど恩を思えという教えを思い出した。
- 怨みほど恩を思えの心を大切にすれば、人から受けた親切を当たり前と思わずに済む。
- 社長は社員に、失敗への不満だけでなく周囲の助力も忘れないよう、怨みほど恩を思えと語った。
- 怨みほど恩を思えという教えは、嫌な記憶に心を奪われず、受けた恩を大切にするよう戒めるものだ。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・小川環樹・西田太一郎・赤塚忠・阿辻哲次・釜谷武志・木津祐子編『角川新字源 改訂新版』KADOKAWA、2017年。
・Robert Christy編『Proverbs, Maxims, and Phrases of All Ages』G. P. Putnam’s Sons、1887年。























