【故事成語】
越俎の罪
【読み方】
えっそのつみ
【意味】
自分の職分や権限を越えて、他人の仕事や領分に干渉する罪。


【英語】
・overstep one’s authority(自分の権限を越える)
【類義語】
・越俎代庖(えっそだいほう)
・越権行為(えっけんこうい)
【対義語】
・安分守己(あんぶんしゅき)
「越俎の罪」の故事
「越俎の罪」は、中国の古典『荘子(そうじ)』「逍遥遊(しょうようゆう)」に出てくる故事にもとづく言葉です。『荘子』は、現行本が三十三編からなり、内篇・外篇・雑篇に分かれ、戦国末ごろにはまとまっていたと考えられています。
もとになったのは、古代中国の聖天子とされる尭(ぎょう)が、賢者の許由(きょゆう)に天下を譲ろうとする場面です。許由はその申し出を受けず、自分には天下を用いる必要がないとして断ります。
『荘子』「逍遥遊」には、許由の言葉として「庖人雖不治庖,尸祝不越樽俎而代之矣」とあります。これは、料理人が料理の役目を十分に果たさないとしても、祭りをつかさどる人が酒器や供物台を越えて、料理人に代わって料理をすることはない、という意味です。
「庖人」は料理人を指します。「尸祝(ししゅく)」は神に仕える役の人を指し、神官の意味で用いられます。
「俎」は、古くは祭りで神への供物を載せる台を表し、また、まな板の意味もあります。この故事では、供物や料理に関わる場を示すものとして用いられています。
「越俎」の「越」は、越える、こすという意味です。そのため「越俎」は、供物台や料理の領分を越えることから転じて、自分の本分を越え、他人の職分を犯すことを表します。
この故事で許由が言いたかったのは、役目にはそれぞれ境界があるということです。料理人が十分に働かないからといって、神官が自分の役目を離れて料理人の仕事を奪えば、それは正しい分担を乱すことになります。
この言葉は、もともと許由が尭から天下を譲られることを断る場面で用いられました。尭がすでに天下を治めているのに、自分がそれに代われば、名を求めて人の役目を奪うことになる、という考えが背景にあります。
後に「越俎」は、他人の職分や権限を犯すことを表す言葉として定着しました。さらに「越俎の罪」は、そのような越権的なふるまいによって生じる過ちや責めを表す形になりました。
近い形に「越俎代庖」があります。「代庖」は、料理人に代わるという意味で、料理人を差しおいて他の人が料理をすることから、出しゃばることや越権行為をすることのたとえになります。
「越俎の罪」は、ただ意見を言ってはいけないという意味ではありません。必要な助言と、相手の権限を奪う干渉とは違うため、自分の立場と相手の役目をよく見きわめることが大切だと教える故事成語です。
現在では、学校の係、部活動、会社の部署、地域の役割など、担当が分かれている場面で使われます。よかれと思っても、他人の領分に無断で入り込み、決定や仕事を乱すなら、「越俎の罪」と言われることがあります。
「越俎の罪」の使い方




「越俎の罪」の例文
- 係でもない人が会議の決定を勝手に変えたため、越俎の罪として注意された。
- 友人の作文に助言するだけならよいが、本人に断らず書き直すのは越俎の罪に近い。
- 他部署の仕事に無断で指示を出した彼の行動は、越俎の罪と受け取られた。
- 親切のつもりでも、担当者の判断を奪えば、越俎の罪になるおそれがある。
- 部長でもない生徒が練習メニューを勝手に決め、越俎の罪だと反発を受けた。
- 越俎の罪を避けるには、相手の役割を尊重し、必要なときは相談してから動くことが大切だ。
主な参考文献
・日本漢字能力検定協会編『漢検 漢字辞典 第二版』日本漢字能力検定協会、2014年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・白川静『字通 普及版』平凡社、2014年。
・『荘子』戦国末ごろ成立。
・Oxford University Press『Oxford Advanced Learner’s Dictionary』。























