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【尾を塗中に曳く】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語)

尾を塗中に曳く

【故事成語】
尾を塗中に曳く

【読み方】
おをとちゅうにひく

【意味】
高い地位について自由を束縛されるより、貧しくても自由で安らかに暮らす方がよいことのたとえ。

ことわざ博士
「尾を塗中に曳く」は、名誉や富よりも、自分の意思で生きる自由を重んじる考えを表すよ。
助手ねこ
出世や重要な役目を勧められても、束縛を避けて静かな暮らしを選ぶ場面に用いるニャン。

【類義語】
・曳尾(えいび)
・曳尾塗中(えいびとちゅう)

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「尾を塗中に曳く」の故事

故事成語を深掘り

「尾を塗中に曳く」の「塗」は、ここでは泥を指し、「曳く」は引きずるという意味です。言葉どおりには、亀が泥の中で尾を引きずりながら生きている姿を表します。

この故事は、中国の道家書『荘子(そうじ)』(中国・戦国時代)の外篇(がいへん)「秋水(しゅうすい)」に出てきます。荘子は名を周といい、紀元前4世紀後半ごろに活躍した思想家で、名誉や決まりに縛られず、人間が本来もつ自由を大切にする生き方を説きました。

あるとき、荘子が濮水(ぼくすい)のほとりで釣りをしていると、楚(そ)の王が、二人の大夫(たいふ:高い地位の家臣)を使者として送りました。使者たちは、荘子に国の政治を任せたいという王の意向を伝え、高い地位に就いてほしいと申し入れました。

荘子は、釣り竿を持ったまま、振り向きもせずに使者へ問いかけました。楚の国には、死んでから三千年もたつ神亀(しんき)の甲羅があり、布で包んで箱に納め、廟堂(びょうどう:祖先を祭る建物)に大切に保存していると聞くが、その亀は、死んで骨を残して尊ばれることと、生きて泥の中に尾を引きずることの、どちらを望むだろうか、と尋ねたのです。

二人の使者は、亀ならば、泥の中で尾を引きずってでも生きている方を望むだろうと答えました。すると荘子は、「往け、吾は将に尾を塗中に曳かん」と告げ、使者を帰しました。これは、立派な役職を得て窮屈に暮らすよりも、世間から離れて自由に生きる方を選ぶ、という返事です。

故事に登場する二匹の亀は、実際には、同じ亀の二つの姿です。一方は、命を失った代わりに王宮で尊ばれる亀であり、もう一方は、泥にまみれていても自由に動き回る生きた亀です。この対比によって、地位や名誉のために自由を失う生き方と、貧しくても自分らしく生きる道との違いが、はっきりと示されています。

この表現は、後の中国でも、名誉や官職を避けて自由な生活を選ぶことのたとえとして受け継がれました。西晋(せいしん)の陳寿が3世紀後半に著した『三国志(さんごくし)』の「蜀書(しょくしょ)・郤正伝」にも、「寧ろ尾を塗中に曳かん」という形で出てきます。そこでは、賢い人物が世間の評判や災いを避け、身を引いて暮らす姿を表しています。

日本では、平安時代末期に成立した漢詩集『本朝無題詩(ほんちょうむだいし)』(1162~1164年ごろ)に、この故事を踏まえた古い用例があります。大江佐国の「雲林院花下言志」には、「身は泥中に尾を曳く亀に類す」とあり、自分の身を、泥の中で尾を引く亀になぞらえています。高い地位を求めず、静かに暮らそうとする心を、荘子の亀によって表したものです。

原典の「曳尾於塗中」は、日本語では「尾を塗中に曳く」と読み下されました。「塗中」を分かりやすい言葉に置き換えた「尾を泥中に曳く」という形も広く使われ、さらに、「曳尾」や「曳尾塗中」と短く表すこともあります。どの形も、地位や名誉に縛られるよりも、たとえ質素でも自由に生きる方がよいという、荘子の選択につながっています。

「尾を塗中に曳く」の使い方

ともこ
児童会の会長選挙への立候補を取りやめて、大好きな図書委員の活動に専念するって本当?
健太
うん、大きな役職について時間に追われるより、自分のペースで本に囲まれる時間を大切にしたいんだ。
ともこ
まさに尾を塗中に曳くという言葉通りの選択だね!
健太
周りの評価よりも自分が心から納得できる自由な時間を楽しむのが、ぼくには一番合っているよ。
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「尾を塗中に曳く」の例文

例文
  • 彼は会社の重役になる話を断り、尾を塗中に曳くような静かな生活を選んだ。
  • 名声を求めず故郷で畑を耕した学者の姿は、尾を塗中に曳くという言葉にふさわしい。
  • その作家は公の役職につかず、尾を塗中に曳く生き方を貫いた。
  • 父は高い給料よりも自由に働ける道を選び、尾を塗中に曳く方がよいと語った。
  • 王から官職を勧められても、賢者は尾を塗中に曳く道を望んだ。
  • 尾を塗中に曳くという考えから、彼女は名誉ある地位よりも穏やかな日々を選択した。

主な参考文献

・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000~2002年。
・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・市川安司・遠藤哲夫著『新釈漢文大系8 荘子 下』明治書院、1967年。
・『荘子』戦国時代。
・陳寿『三国志』3世紀後半。
・『本朝無題詩』1162~1164年ごろ。





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