【ことわざ】
風下に笊
【読み方】
かざしもにざる
【意味】
苦労が多いわりに成果が少ないこと。また、方法が目的に合わず、役に立たないこと。


【英語】
・The game is not worth the candle.(得られる利益が、費用や労力に見合わない)
【類義語】
・骨折り損のくたびれ儲け(ほねおりぞんのくたびれもうけ)
【対義語】
・一挙両得(いっきょりょうとく)
「風下に笊」の語源・由来
「風下に笊」は、風下に笊を置いて風を防ごうとしても、何の役にも立たないことから生まれたことわざです。その頼りない様子を、苦労のわりに成果が少ないことのたとえにしています。
「風下」は「かざしも」と読み、風が吹いていく方向を指します。風が来る側を表す「風上」と反対の位置に当たります。
「笊」は、細く割った竹などを編んで作る器です。水切りに使えるように編み目があり、水や空気を通す作りになっています。
このような笊を風よけとして置いても、風は編み目を通り抜けてしまいます。しかも風下に置いたのでは、風が来る側をふさぐことにもなりません。
つまり、風を防ごうとして笊を運び、置き場所を整えても、肝心の風は少しも防げません。行動には手間がかかっているのに、目的を果たす効果がないという構図です。
このことから、「労多くして功少ないこと」と「役に立たないこと」という二つの意味が生まれました。前者は苦労に比べて成果が乏しいことに、後者は用いた方法そのものに効果がないことに重点があります。
このことわざは、努力そのものを軽んじる言葉ではありません。目的に合わない道具や方法を選べば、どれほど力を注いでも、望む結果には結び付きにくいことを表しています。
古い用例として、『諺苑(げんえん)』(1797年・江戸時代後期、太田全斎著)に「風下へざる」とあります。現在の「風下に笊」とは助詞や表記が異なりますが、同じ情景を表す言い方です。
『諺苑』は七巻から成る国語辞書で、当時使われていた俗語や俗諺(ぞくげん:世間で言い伝えられることわざ)を集め、いろは順に並べた書物です。「風下へざる」も、江戸時代に伝わっていた短い言い回しとして収められています。
古い形の「風下へざる」では、「へ」が笊を置く方向を表しています。現在の「風下に笊」では、「に」によって笊を置く場所が示され、情景がいっそう簡潔にまとめられています。
また、古い用例では「ざる」と仮名で書かれていますが、現在の見出しには「笊」の漢字を用います。「笊」は竹で編んだ器を表す字で、この道具の編み目こそが、風を防げないというたとえの要点になっています。
「風下に笊」は、単に結果が悪かった場合ではなく、方法の選び方に問題があり、初めから十分な効果を望みにくい場面によく合います。目的と手段がかみ合わず、苦労だけが重なっている様子を端的に表すことわざです。
「風下に笊」の使い方




「風下に笊」の例文
- 集計済みの記録があるのに、伝票を一枚ずつ数え直すのは風下に笊だ。
- 読者のいない場所に広告を出し続けても、風下に笊で成果は望めない。
- 目的と関係のない資料ばかり集める調査は、風下に笊となりかねない。
- 壊れた機械の原因を調べず、部品を次々に交換するのは風下に笊だ。
- 参加者の希望を聞かずに同じ催しを繰り返していては、風下に笊に終わる。
- 古い手順にこだわって作業を何度もやり直す状態は、まさに風下に笊だった。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・Diana Lea・Jennifer Bradbery編『Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Tenth Edition』Oxford University Press,2020.
・太田全斎『諺苑』1797年。
・太田全斎著、頼惟勤解説『諺苑 春風館本 古辞書叢刊 第1』新生社、1966年。























