【ことわざ】
昨日は人の身今日は我が身
【読み方】
きのうはひとのみきょうはわがみ
【意味】
他人にふりかかった災難や不幸が、いつ自分にもふりかかるかわからないこと。人の運命や身の上は予測しがたいというたとえ。


【英語】
・Today you; tomorrow me.(今日はあなた、明日は私)
【類義語】
・明日は我が身(あすはわがみ)
・今日は人の上明日は我が身の上(きょうはひとのうえあすはわがみのうえ)
・人の事は我が事(ひとのことはわがこと)
【対義語】
・対岸の火事(たいがんのかじ)
「昨日は人の身今日は我が身」の語源・由来
「昨日は人の身今日は我が身」は、「昨日」と「今日」を対にして、人の身の上がすぐに入れ替わることを表したことわざです。ここでいう「身」は、からだだけでなく、境遇や身の上を含む言葉として使われています。
「昨日は人の身」とは、昨日は他人に起こったこと、という意味です。「今日は我が身」と続けることで、その災難や不幸が今日には自分に及ぶかもしれない、という注意を強く示しています。
このことわざは、他人の不幸を笑ったり、安心して眺めたりする心を戒める言い方です。人の運命や人事の変遷は予測できないため、他人の不幸を自分への戒めとせよ、という意味で用いられてきました。
古い出典として、『保元物語(ほうげんものがたり)』が関わる表現として伝えられています。『保元物語』は、保元の乱を素材にした鎌倉時代の軍記物語で、三巻から成り、作者は未詳、承久年間ごろまでに成立したと考えられます。
『保元物語』は、親子や兄弟が敵味方に分かれるような、平安時代末期の激しい争いを描いた作品です。そのような世界では、昨日まで遠くにあった不幸が、今日には自分の身に迫るという考え方が、物語の無常感とよく重なります。
また、近い形の古い言い回しとして、『平治物語(へいじものがたり)』にも「昨日の他州の愁へ、今日は我が身の責め」という表現が出てきます。『平治物語』は、平治の乱を描いた鎌倉時代の軍記物語で、三巻、作者・成立年ともに未詳です。
この場面では、かつて他人の側にあった苦しみが、今は自分の責めとなって返ってくるという意味で語られています。「他州」はよその国や他所を思わせる言葉で、遠くの出来事と思っていた苦難が自分へ移る、という発想を表しています。
現在の形に近い古い用例として、近松門左衛門の浄瑠璃『津国女夫池(つのくにめおとがいけ)』(1721年・江戸時代中期、近松門左衛門作)に、「きのふは人の身のうへの、けふは我身のあすか川、罪なきつみにしづみ行」という形が出てきます。
この用例では、「昨日は人の身の上であったことが、今日は我が身に及ぶ」という意味が、悲劇的な場面の中で表されています。人の不幸を遠いものとして見るのではなく、いつ自分に及ぶか分からないものとして受け止める感覚が、現在のことわざの意味につながっています。
「昨日は人の身今日は我が身」は、単に不安をあおる言葉ではありません。他人の災難を見たとき、自分にも起こりうることとして考え、備え、思いやりをもつように促すことわざです。
「昨日は人の身今日は我が身」の使い方




「昨日は人の身今日は我が身」の例文
- 友人のけがを聞いて、昨日は人の身今日は我が身と思い、自転車の乗り方を見直した。
- 同僚の失敗を笑わず、昨日は人の身今日は我が身として自分の確認作業も丁寧に行った。
- 近所で空き巣の被害があり、昨日は人の身今日は我が身と考えて家の鍵を点検した。
- 昨日は人の身今日は我が身というように、災害への備えは他人事にしてはならない。
- 兄は友だちの体調不良を聞き、昨日は人の身今日は我が身だと早めに休むことにした。
- 会社の経営不振を聞いて、昨日は人の身今日は我が身の思いで仕事の進め方を改めた。
主な参考文献
・松村明監修『デジタル大辞泉』小学館。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・公益財団法人日本漢字能力検定協会『漢字ペディア』。
・国民図書編『日本文学大系 第十四巻 保元物語・平治物語』国民図書、1925年。
・近松門左衛門『津国女夫池』1721年。
・John Simpson and Jennifer Speake eds., The Oxford Dictionary of Proverbs, Oxford University Press, 2008.























