【ことわざ】
敵の前より借金の前
【読み方】
かたきのまえよりしゃっきんのまえ
【意味】
敵の前では平然としていられても、金を借りている相手の前では頭が上がらないということ。借金をしている身のつらさをいうたとえ。


【英語】
・The borrower is servant to the lender.(借り手は貸し手に従う立場になる)
【類義語】
・敵の前は通れるが借金の前は通れぬ(かたきのまえはとおれるがしゃっきんのまえはとおれぬ)
・頭が上がらない(あたまがあがらない)
・借りがある(かりがある)
「敵の前より借金の前」の語源・由来
「敵の前より借金の前」は、敵と向き合う緊張よりも、金を借りている相手の前に出る気まずさのほうがつらいという生活感覚から生まれたことわざです。ここでいう「敵」は「かたき」と読み、戦争や争いの相手、また深い恨みを抱く相手を指す言葉です。
「借金」は、金銭を借りること、または借りた金銭を指します。借金には、返さなければならないという責任が伴うため、単なる金の不足だけでなく、人間関係の重さも含まれます。
このことわざの要は、「敵の前」と「借金の前」を比べるところにあります。敵の前では胸を張っていられても、借金をしている相手の前では頭が上がらない、という対比によって、借金を負った人の肩身の狭さを強く表しています。
「頭が上がらない」は、引け目を感じて相手と対等な関係に立てないことを表す言い方です。この意味が、「敵の前より借金の前」の中にある借り手の心理をよく支えています。
この表現は、中国古典の具体的な人物や事件から生まれた言葉ではなく、借金をめぐる日常の経験をもとにした教訓的な言い方です。ことわざは、古くから言い伝えられてきた教訓や風刺を含む短い言葉で、生活体験から来た社会常識を示すものが多いとされます。
「敵の前」は、命や面目にかかわる場面を思わせる強い言い方です。それでもなお、「借金の前」のほうがつらいと述べることで、借りた金を返せないことの重圧や、貸してくれた人に対する負い目を、はっきり浮かび上がらせています。
類義の形に「敵の前は通れるが借金の前は通れぬ」があります。こちらは、敵の前なら通り過ぎることができても、借金相手の前は気まずくて通れない、という形で同じ心理を表します。
「借金の前」という言い方は、場所そのものというより、借金相手の前に立つ場面を指します。借りた側は、返済の約束を果たすまでは、相手に対して強く出にくくなります。
英語にも、近い考え方として「The borrower is servant to the lender.」という言い方があります。借り手は貸し手に仕える者のような立場になる、という意味で、借金が人の自由や心のあり方に影響するという点で、このことわざと通じています。
現在の「敵の前より借金の前」は、金を借りること自体をすべて否定する言葉ではありません。返す責任を負ったまま相手の前に出るつらさを通して、借金には計画と誠実さが必要であることを教えることわざです。
「敵の前より借金の前」の使い方




「敵の前より借金の前」の例文
- 友人に借りた金を返せないまま会うのは、敵の前より借金の前というほど気まずい。
- 敵の前より借金の前で、強気な兄も貸し主の前ではすっかり小さくなっていた。
- 借金を軽く考えていると、敵の前より借金の前というつらさを味わうことになる。
- 敵の前より借金の前というように、返済の約束を守れないと相手に対して堂々とできない。
- 小さな借りでも返さずにいると、敵の前より借金の前で顔を合わせにくくなる。
- 彼は仕事では堂々としているが、借金の話になると敵の前より借金の前のありさまだ。
主な参考文献
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『デジタル大辞泉』小学館。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。























