【ことわざ】
暗闇の鉄砲
【読み方】
くらやみのてっぽう
【意味】
向こう見ずに、または当てずっぽうに物事をすることのたとえ。


【英語】
・a shot in the dark.(根拠のない推測、成功の見込みが乏しい試み)
【類義語】
・闇に鉄砲(やみにてっぽう)
・闇夜の鉄砲(やみよのてっぽう)
「暗闇の鉄砲」の語源・由来
「暗闇の鉄砲」は、周囲が見えない暗闇の中で、狙う相手や的を確かめずに鉄砲を撃つ場面から生まれたたとえです。目標が見えなければ、どこへ向けて撃てばよいか分からず、たまたま当たることはあっても、狙って成果を得ることはできません。この具体的な情景が、手がかりや見通しのないまま行動することを表すようになりました。
このたとえにつながる古い用例は、『傾城色三味線(けいせいいろじゃみせん)』(1701年・江戸時代前期、江島其磧著)に出てきます。同書には、「むしゃうやみに鉄炮(テッポウ)はなつごとく、出るままの悪口」とあります。むやみに暗闇へ鉄砲を撃つように、目当てもなく、口から出るまま悪口を言い散らす様子を表した一節です。
この用例では、まだ「暗闇の鉄砲」という形で言葉が固定しているのではなく、「闇に鉄砲を放つ」という実際の動作を用いた比喩になっています。しかし、暗くて目標が見えないことと、相手を選ばずに言葉を放つこととを重ねており、現在の意味につながる考え方が、すでにはっきりと表れています。
その後、平賀源内の談義本(だんぎぼん)『根南志具佐(ねなしぐさ)』(1763年・江戸時代中期)の前編には、「或はいつ何日に御出合申べしといふ事も、正真の闇夜の鉄炮にて、あてどもなく」とあります。いつ、何日に会えるかを言うことも、まったく目当てのない「闇夜の鉄炮」のようなものだ、という文脈です。
ここでは「闇夜の鉄炮」というまとまった形が用いられ、そのすぐあとに「あてどもなく」と記されています。「闇の中で撃つ鉄砲」が、単に危険なものではなく、目当てを定められない行為のたとえとして定着していたことが分かります。
この一連の表現には、「闇に鉄砲」「闇夜の鉄砲」「暗闇の鉄砲」などの形があります。言い回しは少しずつ異なりますが、いずれも、暗さのために的が見えず、狙いを定められないという同じ情景に基づいています。「暗闇の鉄砲」は、「闇夜の鉄砲」と同じ系統の表現として扱われています。
また、関連する「闇に鉄砲」や「闇夜の鉄砲」には、目標が定まらないという意味から、行っても効果や意味がないことや、偶然にしか当たらないことを表す用法もあります。暗闇の中では狙って当てられないため、努力が成果につながりにくいという意味へ広がったものです。
現在の「暗闇の鉄砲」は、必要な情報を集めず、目標も方法も定めないまま行動することを戒める表現です。よく考えずに進む向こう見ずな行動と、手がかりのない当てずっぽうな判断の両方を、暗闇で鉄砲を撃つ危うい姿になぞらえています。
「暗闇の鉄砲」の使い方




「暗闇の鉄砲」の例文
- 問題文を読まずに答えを選ぶのは、暗闇の鉄砲に等しい。
- 故障の原因を調べず、手当たり次第に部品を交換するのは暗闇の鉄砲だ。
- 相手の事情を確かめずに問い詰めても、暗闇の鉄砲になりかねない。
- 来場者の好みを調べずに催しの内容を決めるのは、暗闇の鉄砲というものだ。
- 市場調査を行わずに新商品を大量生産する計画は、暗闇の鉄砲だと批判された。
- 証拠も手がかりもないまま犯人を決めつけるのは、暗闇の鉄砲でしかない。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『デジタル大辞泉』小学館。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・Cambridge University Press『Cambridge Advanced Learner’s Dictionary & Thesaurus.』
・江島其磧『傾城色三味線』1701年。
・平賀源内『根南志具佐』1763年。























