【医者の薬も匙加減】の意味と使い方や例文!語源由来は?(類義語・対義語・英語)

医者の薬も匙加減

【ことわざ】
医者の薬も匙加減

【読み方】
いしゃのくすりもさじかげん

【意味】
よい薬でも多ければよいわけではなく、適切な分量が大切であるように、何事にもほどよい加減が必要であるというたとえ。

ことわざ博士
「医者の薬も匙加減」は、役に立つものでも量や使い方を誤ると十分な効果を生まない、という考えを表すことわざなんだよ。
助手ねこ
勉強、運動、親切、注意など、よい行いでも行き過ぎればかえって困った結果になる場面で用いるニャン。

【英語】
・too much of a good thing(よいものでも多すぎると害になること)

【類義語】
・薬も過ぎれば毒となる(くすりもすぎればどくとなる)
・過ぎたるはなお及ばざるがごとし(すぎたるはなおおよばざるがごとし)

【対義語】
・多々ますます弁ず(たたますますべんず)

「医者の薬も匙加減」の語源・由来

ことわざを深掘り

「医者の薬も匙加減」は、医者が薬を調合するときの分量に目を向けたことわざです。薬そのものがよいものであっても、飲む量や合わせ方が適切でなければ、期待される働きをしないという考えが土台にあります。

「匙(さじ)」は、液体や粉末などをすくい取る道具を指す言葉です。古くは食事の道具としての意味を持ち、のちに、医者が薬を調合するために用いる道具を指す用法もはっきりしました。

医者と匙との結びつきは、薬を扱う仕事の中で自然に強まりました。粉末の薬品を容器から移し替えたり、盛り分けたりするための「薬匙(やくさじ)」もあり、匙は、薬の量を決める道具として大切な役割を持っていました。

「匙」は、道具そのものだけでなく、薬の調合や薬を表す意味にも広がりました。さらに、江戸時代には、大名などに仕える医者を「お匙」と呼ぶ言い方もあり、匙は、医者の仕事を象徴する言葉としても用いられていました。

「匙加減」は、もともと、薬を調合するときに匙ですくう薬の分量の多少を指しました。ここから、医者の手当のしかた、さらに、一般の物事の配合や手加減を表す言葉へと意味が広がりました。

古い用例では、『俳諧三部抄』(1677年・延宝5年・江戸時代前期)に、分量や手加減に通じる早い形が出てきます。この段階では、薬に限らず、どれくらいの程度にするかを見はからう感覚が、言葉の奥にあります。

薬の調合そのものに近い用例としては、『好色訓蒙図彙(こうしょくきんもうずい)』(1686年・貞享3年・江戸時代前期、無色軒三白居士作、吉田半兵衛画)に、「匕かげん」という形が出てきます。これは、薬を扱う匙の分量や扱い方を背景にした表現です。

『艶道通鑑(えんどうつがん)』(1715年・正徳5年・江戸時代中期、増穂残口著)には、病の治療には匙加減が関わるという趣旨の表現が出てきます。ここでは、匙加減は単なる量ではなく、医者の手当や治療のしかたを含む言葉として用いられています。

江戸時代の言葉には、同じ背景を持つ「匙先(さじさき)」もあります。匙先は、医者の薬の調合のしかたや医薬の技量を表し、薬をどう扱うかが、医者の腕前と結びついて考えられていたことを示しています。

また、「匙が回る」という言い方も、薬の調合がうまくいき、その病気に効く薬を作ることができるという意味で使われました。薬をただ持っているだけではなく、病状に合わせてうまく扱う力が重要だったことがうかがえます。

こうした言葉の流れの中で、「医者の薬も匙加減」は、薬の効き目を決めるのは薬そのものだけではなく、分量や扱い方でもあるという考えを、日常の教訓へと広げたことわざとなりました。よいことでも、度を越せばよさを失うという意味は、「薬も過ぎれば毒となる」とも近く響き合います。

現在では、薬の話に限らず、勉強のしすぎで体をこわす、親切のつもりが相手の負担になる、注意しすぎて自由を失わせる、といった場面にも使われます。中心にあるのは、よいものを生かすには、量・程度・時機を見きわめることが大切だという教えです。

「医者の薬も匙加減」の使い方

健太
漢字テストで百点を取りたくて、昨日は夜中まで三時間も続けて勉強したんだ。でも今朝は眠くて、授業中に頭が働かなかったよ。
ともこ
それはがんばりすぎたね。医者の薬も匙加減で、勉強も時間と休み方の加減が大事なんじゃない?
健太
たしかに、覚えたつもりの漢字まで、眠くて思い出せなかったよ!
ともこ
今日は一時間勉強したら休けいを入れて、早めに寝よう。よい努力も続けられる形にしたほうが力になるよ。

「医者の薬も匙加減」の例文

例文
  • 毎日走ることは健康によいが、休まずに走り続けて足を痛めては、医者の薬も匙加減である。
  • 先生の注意も細かすぎると子どもが考えられなくなるので、医者の薬も匙加減というものだ。
  • 親切のつもりで何でも手伝いすぎると相手の力を奪うため、医者の薬も匙加減を忘れてはいけない。
  • 仕事の確認は大切だが、何度も見直しすぎて締め切りに遅れるなら、医者の薬も匙加減だ。
  • 栄養のある食べ物でも同じものばかり食べれば体に偏りが出るので、医者の薬も匙加減と言える。
  • 医者の薬も匙加減は、よいものでも量や程度を誤れば逆効果になるという教えを表すことわざである。

主な参考文献
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・『改訂新版 世界大百科事典』平凡社、2007年。
・無色軒三白居士作、吉田半兵衛画『好色訓蒙図彙』1686年。
・増穂残口『艶道通鑑』1715年。
・The American Heritage Idioms Dictionary, Houghton Mifflin Harcourt, 2002.




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