【ことわざ】
害心ある者妨害あり
【読み方】
がいしんあるものぼうがいあり
【意味】
人に害を加えようとする悪意があると、相手もそれを防ごうとして、こちらを妨げたり警戒したりするということ。


【類義語】
・人を呪わば穴二つ(ひとをのろわばあなふたつ)
・因果応報(いんがおうほう)
【対義語】
・情けは人の為ならず(なさけはひとのためならず)
「害心ある者妨害あり」の語源・由来
「害心ある者妨害あり」は、特定の昔話の一場面をもとにした言い方というより、「害心」と「妨害」という漢語を組み合わせ、人間関係の道理を短く言い表したことわざです。「害心」は、害を加えようとする心、または敵を殺そうとする心を指します。「妨害」は、さまたげること、邪魔することを指します。この二つを続けることで、悪い心をもつ人には、それを防ごうとする相手の働きが返ってくる、という形になります。
「害心」という言葉は、古くから用いられています。『玉葉(ぎょくよう)』(長寛2年から建仁3年までの記録を含む、九条兼実の日記)には、寿永2年(1183年)の用例があり、他人に害を加えようとする心を表す言葉として扱われています。
また、『愚管抄(ぐかんしょう)』(承久2年ごろ成立、慈円著)にも、「害心」を起こすという形の用例があります。ここでの「害心」は、ただ不機嫌になることではなく、相手を害しようとする危険な心の動きを表しています。ことわざの前半にある「害心ある者」は、このような悪意や危害の意志をもつ人を指す言い方です。
一方の「妨害」も、古くは「妨礙」などの表記で用いられました。『権記(ごんき)』(正暦2年から寛弘8年までの部分が伝わる、藤原行成の日記)には、長徳4年(998年)の例として「妨礙」の形が出てきます。のちには「妨害」という表記で、物事の進行をさまたげる意味が広く使われるようになります。
このことわざでは、「害心」は心の内側にある悪意を表し、「妨害」は外に現れる防ぎや邪魔を表します。つまり、悪意をもつ側は、まだ自分の考えを隠しているつもりでも、その態度や行動から相手の警戒を招き、結局は自分の計画が妨げられる、という流れを示しています。
意味の近い「人を呪わば穴二つ」は、人を陥れようとすれば自分にも悪いことが起こる、という報いの面を強く表します。それに対して、「害心ある者妨害あり」は、相手を害しようとする心が、相手の防衛や反撃を呼び、こちらの行動が妨げられる点に重きがあります。どちらも、人を傷つける心が、結局は自分を苦しめるという教えにつながります。
このことわざが伝えるのは、悪意は一方的に相手へ向かうだけでは終わらない、という見方です。人を傷つけようとする心は、相手の警戒を生み、周囲の信頼も失わせます。そのため、はじめは相手を困らせるつもりであっても、最後には自分の行動が進まなくなることがあります。そこに、「害心ある者妨害あり」という戒めの力があります。
「害心ある者妨害あり」の使い方




「害心ある者妨害あり」の例文
- ライバルの作品を壊そうとした計画はすぐに見抜かれ、害心ある者妨害ありとなった。
- 友人の信用を落とそうとしてうわさを流したが、周囲に警戒され、害心ある者妨害ありの結果を招いた。
- 相手の失敗をねらって資料を隠そうとしたため、害心ある者妨害ありで自分の立場まで悪くなった。
- 会社の同僚を陥れようとした企ては証拠で止められ、害心ある者妨害ありを思わせる結末になった。
- 兄を困らせようとゲームの道具を隠した弟は、家族に止められて、害心ある者妨害ありを身をもって知った。
- 相手に害を与えようとする心が見えれば、周囲は自然に防ごうと動くので、まさに害心ある者妨害ありである。
主な参考文献
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・九条兼実『玉葉』1164〜1203年。
・慈円『愚管抄』1220年ごろ。
・藤原行成『権記』991〜1011年。























