【ことわざ】
九尺二間に戸が一枚
【読み方】
くしゃくにけんにとがいちまい
【意味】
間口が九尺、奥行きが二間で、入口の戸が一枚だけというほど、非常に狭く粗末な住まいのたとえ。


【英語】
・a cramped, shabby dwelling.(狭く粗末な住まい)
【類義語】
・九尺二間(くしゃくにけん)
・九尺店(くしゃくだな)
「九尺二間に戸が一枚」の語源・由来
このことわざのもとになった「九尺二間」は、江戸時代のきわめて小さな住まいを表す言葉です。「九尺」は間口(まぐち)が約二・七メートル、「二間」は奥行きが約三・六メートルで、全体の広さは約九・七平方メートル、畳六畳分ほどになります。
ただし、畳六畳をすべて居間として使えたわけではありません。その限られた空間に、土間の上り口や台所、家族が過ごす場所などが収められていたため、実際の生活空間はさらに狭いものでした。
このような住まいは、江戸の裏長屋に多く見られました。裏長屋とは、表通りから入った路地の奥に建つ簡素な借家で、一棟の建物を壁で幾つもの住戸に区切ったものです。この造りは棟割長屋(むねわりながや)とも呼ばれ、井戸や便所などは住人たちが共同で使いました。
「九尺二間」の古い用例は、咄本(はなしぼん)『都鄙談語』(1773年・江戸時代中期)の一篇「巨燵」にあります。そこには「九尺二間の裏店」とあり、裏店(うらだな)、すなわち路地の奥にある小さな借家の広さを表しています。この時点で「九尺二間」は、単なる寸法ではなく、狭い裏長屋を示す言い方として使われていました。
また、「九尺二間」から生まれた言い方として、「九尺店」や「九二間」も使われました。建物の間口と奥行きを示す寸法そのものが、やがて狭く粗末な家を指す名称として定着したことが分かります。
「九尺二間に戸が一枚」は、この「九尺二間」に、入口の戸まで一枚しかないという描写を加えた表現です。細い間口に戸が一枚だけ付いた簡素な家の姿を具体的に示すことで、その狭さや粗末さが、いっそう鮮明に伝わります。
現在では、必ずしも九尺と二間という正確な寸法の家だけを指すわけではありません。江戸の庶民が実際に暮らした小さな裏長屋の姿を背景に、身動きする場所も十分にないほど狭く、造りも簡素な住まいをたとえることわざとして用いられています。
「九尺二間に戸が一枚」の使い方




「九尺二間に戸が一枚」の例文
- 古い町並みの一角には、九尺二間に戸が一枚といった小さな借家が並んでいた。
- 祖父は若いころ、九尺二間に戸が一枚のような住まいから商売を始めた。
- その家は九尺二間に戸が一枚というほど狭く、大きな家具を置く余地もなかった。
- 復元された裏長屋を見ると、九尺二間に戸が一枚という言葉の具体的な姿が分かる。
- 収入の少なかったころ、夫婦は九尺二間に戸が一枚の住まいで力を合わせて暮らした。
- 九尺二間に戸が一枚であっても、家族が支え合えば温かな暮らしを築ける。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・片倉比佐子『江戸住宅事情(都史紀要34)』東京都、1990年。
・『都鄙談語』1773年。























