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【君子は憂えず懼れず】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語・英語)

君子は憂えず懼れず

【故事成語】
君子は憂えず懼れず

【読み方】
くんしはうれえずおそれず

【意味】
徳を備えた立派な人物は、自分の行いを振り返って心にやましいところがないため、何も心配せず、恐れもしないということ。

ことわざ博士
「憂えず懼れず」は、苦しみや危険を感じないことではなく、正しい行いによって心に恥じるところがない状態を表すよ。
助手ねこ
自分の言動に後ろ暗い点がなく、困難な場面でも落ち着いて向き合う人物を評するときに用いるニャン。

【英語】
・A person of integrity has neither anxiety nor fear.(誠実で立派な人物には、心配も恐れもない)

【類義語】
・内に省みて疚しからず(うちにかえりみてやましからず)

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「君子は憂えず懼れず」の故事

故事成語を深掘り

「君子は憂えず懼れず」は、古代中国の思想家・孔子とその弟子たちの言葉や対話を伝える『論語(ろんご)』の「顔淵(がんえん)第十二」に出てくる言葉です。原文では「君子不憂不懼」と記され、日本では「君子は憂えず、懼れず」と読み下されてきました。

孔子の弟子である司馬牛(しばぎゅう)が、あるとき孔子に「君子とは、どのような人物でしょうか」と尋ねました。ここでいう君子とは、身分の高い人ではなく、徳を修めた立派な人格の持ち主を指します。

孔子は、その問いに「君子は憂えず懼れず」と答えました。つまり、君子はくよくよと心配せず、何かを恐れておびえることもないというのです。

司馬牛は、それだけで君子と呼べるのだろうかと疑問に思い、「心配せず、恐れなければ、それを君子というのでしょうか」と重ねて尋ねました。すると孔子は、「内省不疚、夫何憂何懼」、すなわち「自分の心を振り返って、やましいところがないのなら、いったい何を心配し、何を恐れることがあろうか」と答えました。

この答えで大切なのは、ただ大胆であればよいという意味ではないことです。危険を軽く見たり、失敗を気にしなかったりする態度ではありません。日ごろから正しい行いを重ね、自分の良心に恥じるところがないため、心が乱れないという教えです。

古い注釈では、この問答の背景に、司馬牛の家庭の事情があったと述べています。司馬牛の兄である桓魋は乱を起こそうとしており、宋の国から孔子のもとへ学びに来た司馬牛は、兄の行動によって自分にも災いが及ぶのではないかと、いつも心配し、恐れていたというのです。

そのため、孔子の言葉は、司馬牛に向けた具体的な教えでもありました。家族や周囲の人が何をしようとも、自分自身が道に外れた行いをせず、良心に恥じない生き方をしているなら、必要以上におびえることはないと諭したのです。

南宋の朱熹は、この章について、君子は日ごろの行いに心から恥じるところがないため、自然に憂いや恐れがなくなるのだと説いています。心配や恐怖を無理に追い払うのではなく、正しい行いを積み重ねた結果として、落ち着いた心が生まれるという解釈です。

日本でも『論語』の教えとして読み継がれています。大正11年に初出した渋沢栄一の『実験論語処世談』では、司馬牛の事情とともに、この章の意味が詳しく語られています。当時の文章では「君子は憂へず、懼れず」と歴史的仮名遣いで書かれていますが、現在は「君子は憂えず懼れず」という表記が一般的です。

この故事成語は、立派な人物には悩みが一つもないという意味ではありません。自分の行いを静かに振り返り、正しいと確信できる生き方をしていれば、周囲のうわさや思いがけない困難にも、良心を支えとして、落ち着いて向き合えることを教えています。

「君子は憂えず懼れず」の使い方

ともこ
あしたのピアノの発表会、失敗したらどうしようって、ずっとドキドキしているの。
健太
ともこちゃんは毎日休まずに、すごく熱心に練習をがんばっていたじゃないか。
ともこ
うん、自分で納得できるまで、一生懸命に練習したよ。
健太
君子は憂えず懼れずというように、やれるだけのことをやってやましいことがないなら、堂々と弾けばいいと思うよ!
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「君子は憂えず懼れず」の例文

例文
  • 不正な頼みをきっぱり断った委員長は、君子は憂えず懼れずの心で質問に答えた。
  • 証拠を隠さず調査に協力する彼の態度は、君子は憂えず懼れずという言葉にふさわしい。
  • 父は、正しいと思うことを誠実に続けるなら君子は憂えず懼れずだと子どもに教えた。
  • 根拠のないうわさに動揺しない校長の姿から、君子は憂えず懼れずという教えを思い出した。
  • 会社の不正に加わることを拒んだ社員は、君子は憂えず懼れずの態度で会議に臨んだ。
  • 周囲から責められても、良心に恥じることのない彼女は君子は憂えず懼れずの姿勢を崩さなかった。

主な参考文献

・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・『論語』
・何晏集解、邢昺疏『論語注疏』
・朱熹『四書章句集注』南宋。
・渋沢栄一『実験論語処世談』1922年初出。
・James Legge, The Chinese Classics, Vol. I, 1861.





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