【ことわざ】
頭でっかち尻つぼみ
【読み方】
あたまでっかちしりつぼみ
【意味】
初めは勢いがよいが、終わりに近づくにつれて小さく弱くなり、最後がだらしなくなること。


【英語】
・Up like a rocket, down like a stick.(急に勢いよく上がり、急に落ちる)
【類義語】
・竜頭蛇尾(りゅうとうだび)
・尻すぼみ(しりすぼみ)
【対義語】
・尻上がり(しりあがり)
・有終の美(ゆうしゅうのび)
「頭でっかち尻つぼみ」の語源・由来
「頭でっかち尻つぼみ」は、頭が大きく、尻のほうが小さくすぼむ形の不釣り合いを、物事の始めと終わりの差へ移した日本語のたとえです。「頭でっかち尻すぼみ」は、頭ばかりむやみに大きいこと、また、初めは大きく終わりが小さいこと、初めは勢いがよくて終わりはだらしないことを表し、「頭でっかち尻つぼみ」はその異形として用いられます。
「頭でっかち」は、からだのほかの部分に比べて頭が大きいこと、また、上の部分が下の部分に比べて不釣り合いに大きいことを指します。『銀の匙(ぎんのさじ)』(1913〜1915年・大正時代、中勘助著)には「紅白に染めわけた頭でっかちの万燈のさきに」という用例があり、まず形の上の不釣り合いを表す言葉として使われていたことが分かります。
その後、「頭でっかち」は、知識や理論が先に立って行動が伴わないことにも広がります。ただし、「頭でっかち尻つぼみ」では、知識だけが多い人という意味よりも、始めの大きさと終わりの弱さを対照させる働きが中心になります。
「尻」は、人や動物の後部だけでなく、物事の一番あと、終わりの部分も指します。そのため、このことわざの「尻」は、計画や話や仕事の末のほう、つまり結末を表す言葉として働いています。
「窄む(つぼむ)」は、先などが狭く小さくなることを表し、「尻窄み(しりつぼみ)」は「尻窄まり」と同じ意味です。「尻窄(しりすぼまり)」には、容器などの底の方が細く狭くなることと、始めは勢いがよくて、あとになるにつれて衰えることの二つの意味があります。
さらに、「窄る(すぼる)」には「小さくなる」という意味のほか、「衰える・不景気になる」という意味もあります。『世間胸算用(せけんむねさんよう)』(1692年・江戸時代前期、井原西鶴作)には「世のすぼりたる物がたりして」という用例があり、狭く小さくなる感覚が、勢いや景気の衰えへ広がっていたことを示しています。
江戸時代後期の『鳩翁道話(きゅうおうどうわ)』は、柴田鳩翁の道話を筆録した心学道話の代表的な著作で、正篇(1835年)、続篇(1836年)、続々篇(1838年)の三篇九巻からなります。その続篇に当たる『続鳩翁道話』(1836年)には、幕に当たった矢が「尻すぼりにごそごそと落ちてしまふ」という用例があり、「尻すぼり」が、勢いのある初めから力のない終わりへ移る様子を表していたことが読み取れます。
「初めが立派で終わりがふるわない」という発想は、「竜頭蛇尾(りゅうとうだび)」にも通います。こちらは、頭が竜のようで尾が蛇のようであることから、初めは盛んでも終わりがふるわないことを表しますが、「頭でっかち尻つぼみ」は、より身近な「頭でっかち」と「尻つぼみ」を結びつけ、日常の計画や仕事の終わり方を戒めることわざとして用いられています。
このように、「頭でっかち尻つぼみ」は、形の不釣り合いを表す言葉と、終わりが細く弱くなる言葉とが結びついた表現です。大きく始めるだけでは足りず、最後まで勢いと内容を保つ必要があるという意味で、現在も使われます。
「頭でっかち尻つぼみ」の使い方




「頭でっかち尻つぼみ」の例文
- 文化祭の企画は最初だけ大きな宣伝をしたが、当日の内容が薄く、頭でっかち尻つぼみに終わった。
- 兄の夏休みの計画は、初日に細かい表を作っただけで続かず、頭でっかち尻つぼみだった。
- 新商品の発表会は派手な映像で始まったものの、説明と販売準備が不足し、頭でっかち尻つぼみの印象を残した。
- 読書感想文は書き出しだけ力が入り、結論が急に短くなって、頭でっかち尻つぼみになった。
- 町内会の清掃活動は参加者募集の勢いに比べて当日の段取りが弱く、頭でっかち尻つぼみにならない工夫が必要だ。
- 研究発表は調査の目的を大きく掲げたが、結果の整理が浅く、頭でっかち尻つぼみと言われても仕方がない。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・飯間浩明編『四字熟語を知る辞典』小学館、2018年。
・柴田鳩翁述、柴田武修聞書『鳩翁道話』1835〜1838年。
・井原西鶴『世間胸算用』1692年。
・中勘助『銀の匙』1913〜1915年。
・Jennifer Speake ed., 『The Oxford Dictionary of Proverbs Sixth Edition』Oxford University Press, 2015.























