【ことわざ】
ウンカのもちつきは雨
【読み方】
うんかのもちつきはあめ
【意味】
ウンカなどの小さな虫が群れを作り、上下に飛び交うのは、雨が降る前触れだということ。


【類義語】
・蚊が餅搗く(かがもちつく)
「ウンカのもちつきは雨」の語源・由来
「ウンカのもちつきは雨」は、小さな虫が群れを作って上下に飛ぶ現象を、餅つきの動きに見立てたことわざです。そのような群飛が見られると雨が近いという、昔の人々の自然観察から生まれました。
餅つきでは、杵を上げ下げして、臼の中の餅をつきます。虫の群れが空中で何度も上下する様子が、この杵の動きに似ているため、「もちつき」と呼ばれるようになりました。
現在の生物学で「ウンカ」と呼ぶのは、稲などの汁を吸う半翅目(はんしもく)の小さな昆虫です。セミに似た姿をしており、トビイロウンカ、セジロウンカ、ヒメトビウンカなどが知られています。
しかし、古くは「ウンカ」が、群れて飛ぶさまざまな小虫の呼び名として広く使われ、「雲霞」や「雲蚊」とも書かれました。そのため、このことわざの「ウンカ」は、現在の生物学上のウンカ科だけに限らず、蚊柱(かばしら)のような群れを作る小虫を含む言い方です。
小虫が柱のように集まって飛ぶ「蚊柱」という言葉は、藤原定家の家集『拾遺愚草(しゅういぐそう)』(1216〜1233年ごろ成立・鎌倉時代前期、藤原定家著)に出てきます。「草深きしづのふせやのかばしら」と詠まれており、蚊の群れが立ちのぼる光景が、中世から身近に知られていたことが分かります。
虫の群飛を餅つきに見立てた古い言い方には、「蚊が餅搗く」があります。『好色万金丹(こうしょくまんきんたん)』(1694年・江戸時代前期、夜食時分著)には、「蚊のもちつく」という表現が出てきます。
この場面では、榧(かや)の鋸屑(のこくず)をいぶした煙によって蚊の群れが崩れた様子を、「蚊のもちつくは破れけり」と表しています。虫が空中で集まり、上下に動く光景そのものを「もちつく」と呼んでいたことが分かります。
横井也有の俳文集『鶉衣(うずらごろも)』(前編1787年・後編1788年刊、江戸時代後期、横井也有著)にも、「やぶ蚊も軒にもちつく比」とあります。軒先で蚊が群れて上下する光景を表しており、「虫が餅をつく」という比喩が江戸時代にも受け継がれていたことを示しています。
蚊柱を作るのは、蚊だけではありません。ユスリカ、ガガンボダマシ、ヒメガガンボなども、朝夕を中心に空中で群れを作り、上下しながら飛びます。その多くは雄の群れで、そこへ雌が入って交尾するための行動です。
こうした群飛は、土地によって、天候や季節を知る生物暦(せいぶつれき)の一つとされました。「カのもちつき」「カツボのこめつき」などの呼び名が生まれ、「ウンカのもちつき雨を呼ぶ」ということわざも伝えられています。
「ウンカのもちつきは雨」は、同じ内容を「は雨」という短い形にまとめた言い方です。「ウンカが餅をつくように群れ飛べば、次は雨になる」という自然の変化を、覚えやすい一続きの表現にしています。
このことわざは、虫の群飛だけで必ず雨が降ると断定するものではありません。空や風、生き物の様子を細かく観察し、暮らしや農作業に役立ててきた人々の経験を伝える、天気のことわざです。
「ウンカのもちつきは雨」の使い方




「ウンカのもちつきは雨」の例文
- 川辺で小さな虫が盛んに上下していたので、祖父はウンカのもちつきは雨と言って空を見上げた。
- ウンカのもちつきは雨を思い出し、母は庭に干してあった洗濯物を取り込んだ。
- 農作業をしていた人々は、ウンカのもちつきは雨を目安に、刈り取った草を納屋へ運んだ。
- 子どもたちは、ウンカのもちつきは雨ということわざを確かめるため、虫の群れと天気を観察した。
- 祭りの準備中に蚊柱が現れたため、係の人はウンカのもちつきは雨を思い出して雨よけを張った。
- ウンカのもちつきは雨という昔の言い伝えには、生き物の動きから天候を読もうとした人々の知恵が表れている。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・平凡社編、加藤周一編集長『改訂新版 世界大百科事典』平凡社、2007年。
・小学館編『日本大百科全書』小学館、1984〜1994年。
・藤原定家『拾遺愚草』1216〜1233年ごろ。
・向井去来・野沢凡兆編『猿蓑』1691年。
・夜食時分『好色万金丹』1694年。
・横井也有『鶉衣』1787〜1823年。























