【ことわざ】
暁知らずの宵枕
【読み方】
あかつきしらずのよいまくら
【意味】
宵のうちから寝床に入り、明け方になっても目を覚まさないこと。早く寝たのに、朝遅くまで眠っているさま。


「暁知らずの宵枕」の語源・由来
「暁知らずの宵枕」は、「宵(よい)」の早い時刻から枕につき、そのまま眠って、「暁(あかつき)」になったことにも気づかない、という一夜の姿を表したことわざです。「宵」は、日が暮れてまだ間もないころ、または日暮れから夜中までの間を指し、「枕」は、寝るときに頭をのせる寝具であるとともに、言い回しの中では寝ることとも結びつく言葉です。
このことわざで大切なのは、「宵」と「暁」が、一晩の始まりと終わりに近い時間を表していることです。古くは、夜を「宵」「夜中」「あかとき」の三つに分け、「宵」は日暮れに近い時間、「あかとき」は夜が明けようとする時間を表しました。「あかとき」は、のちに音が変化して「あかつき」となり、夜明け前後を表す「暁」の読みとして受け継がれました。
「宵」の古い例は、『日本書紀』(720年・奈良時代)の歌謡にあり、そこでは夜の早い時間を指す言葉として用いられています。「暁」についても、『日本書紀』の訓に「鶏鳴(アカツキ)に及ばむとして」とあり、夜が明けようとするころを表す言葉として使われています。つまり、「宵」も「暁」も、古くから夜の移り変わりを区切って表す言葉でした。
平安時代になると、「暁」は、夜が終わり、朝へ移る時を表す言葉として、物語や和歌の世界でも多く用いられました。『源氏物語』(1001〜1014年ごろ成立・平安時代中期)「葵」には、「あか月深くかへり給ふ」とあり、明け方の深い時刻に帰る場面を表しています。また、当時の男女の往来では、男が「宵」に訪れ、「暁」に帰るという時間の対照も、文学の中で親しまれていました。
こうした言葉の背景をもつ「暁知らずの宵枕」は、宵に早々と枕についたのに、夜の終わりである暁さえ知らずに眠り込んでいる、という取り合わせによって成り立っています。「知らず」は、単に夜明けを見なかったということではなく、朝が来たことにも気づかないほど深く、長く眠ったことを強めています。
早く寝た人は早く目覚めそうなものですが、このことわざは、その予想に反して朝寝をしてしまう姿を、少しおかしみを含めて言い表します。夜ふかしのために朝起きられないのではなく、宵から眠っていたのに暁を過ぎても起きない、というところに、このことわざならではの意味があります。
「暁知らずの宵枕」の使い方




「暁知らずの宵枕」の例文
- 明日の登山に備えて早く床に就いた父は、暁知らずの宵枕となり、出発時刻に遅れた。
- 合宿初日の疲れで、子どもたちは暁知らずの宵枕となり、朝の体操に集まれなかった。
- 試験の前日は早寝をしたのに、兄は暁知らずの宵枕で目覚ましにも気づかなかった。
- 休日の祖父は夕食後すぐに眠り、翌朝は暁知らずの宵枕となって昼近くまで起きなかった。
- 祭りの準備を終えた青年たちは早々に休んだが、翌日は暁知らずの宵枕で集合に遅れた。
- 家族旅行の前夜、弟は宵のうちから眠ったのに、暁知らずの宵枕で新幹線に乗り遅れかけた。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。























