【ことわざ】
姉は菅笠、妹は日傘
【読み方】
あねはすげがさ、いもとはひがさ
【意味】
同じ家で育った姉妹でも、嫁ぎ先によって暮らしぶりや境遇に大きな差が出ることのたとえ。


「姉は菅笠、妹は日傘」の語源・由来
「姉は菅笠、妹は日傘」は、同じ家で育った姉妹でも、嫁ぎ先によって暮らしぶりが大きく変わることを、二つのかぶり物・差し物の対照で表したことわざです。ここでいう嫁ぎ先は、嫁に行った家、つまり婚家を指します。
菅笠は、スゲの葉で編んだ笠です。古い用例としては、『万葉集』(8世紀後半成立、奈良時代)に「菅笠(すがかさ)」の形が出ており、菅で作った笠が早くから生活の道具として知られていたことが分かります。
また、『中右記』(1108年・平安時代後期、藤原宗忠の日記)にも「菅笠」の用例があります。さらに江戸時代には、雑俳『川柳評万句合』(1780年)に「あつひ事すけ笠うりの声ばかり」とあり、暑い季節や戸外の生活と結びつく笠として、人々の身近な道具であったことがうかがえます。
菅笠は、カサスゲというスゲを材料にして縫いつづった笠の総称でもあります。外出、旅行、雨天などに用いられ、北海道・沖縄を除く広い地域で使われましたが、近年では東日本の農山村の一部に用例が残る程度とされます。
一方の日傘は、強い日ざしをさえぎるためにさす傘です。古くは「日唐傘(ひがらかさ)」ともいい、貴人や花魁、小児などが外出する時、供の者が後ろからさしかける長い柄の日よけ傘を指す用法もありました。
日傘にも古い用例があり、『毛吹草』(1638年・江戸時代前期、松井重頼編)に「ひからかさ」の例が出ています。また、俳諧『続猿蓑』(1698年・江戸時代前期)には「日傘」の例があり、江戸時代には日よけの傘としての言い方が文芸の中にも使われていました。
このことわざでは、菅笠と日傘が、ただの道具名として並んでいるだけではありません。菅笠は、戸外で働く暮らし、汗を流して家の仕事を支える生活を思わせます。日傘は、日ざしをよけながら外へ出る、比較的ゆとりのある暮らしを思わせます。
そのため、「姉は菅笠、妹は日傘」は、姉と妹の価値を比べる言葉ではありません。血のつながりや育った家が同じでも、結婚後に入った家の仕事や暮らしによって、境遇が大きく分かれてしまうという、昔の社会の見方を短く表したものです。
現代では、結婚によって女性の人生が一方的に決まるという考え方は、そのまま受け入れられるものではありません。このことわざは、昔の生活観を背景にもつ表現として理解し、人の暮らしを単純に比べたり、決めつけたりしないように用いることが大切です。
「姉は菅笠、妹は日傘」の使い方




「姉は菅笠、妹は日傘」の例文
- 昔の村では、同じ家から嫁いだ姉妹でも、姉は菅笠、妹は日傘といわれるほど暮らしぶりが分かれることがあった。
- 祖母は、親戚の姉妹の境遇の違いを話す時、姉は菅笠、妹は日傘という古いことわざを引いた。
- 姉は菅笠、妹は日傘という言葉には、嫁ぎ先によって女性の生活が大きく左右された時代の考え方が表れている。
- 物語の中では、姉は菅笠、妹は日傘のように、二人の姉妹がまったく違う暮らしを送っていた。
- 姉は菅笠、妹は日傘という表現を使う時は、苦労する人と楽に見える人を単純に比べない配慮が必要だ。
- 姉は菅笠、妹は日傘という古いことわざから、昔の結婚と家の関係について考えることができる。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・小学館『日本大百科全書』小学館、1984〜1994年。























