【ことわざ】
蟻も軍勢
【読み方】
ありもぐんぜい
【意味】
一人一人は頼りなく小さな力でも、大勢集まれば、いないよりましで一定の役に立つというたとえ。


【英語】
・Many hands make light work(人手が多ければ仕事は楽になる)
【類義語】
・餓鬼も人数(がきもにんじゅ)
・枯れ木も山の賑わい(かれきもやまのにぎわい)
【対義語】
・少数精鋭(しょうすうせいえい)
「蟻も軍勢」の語源・由来
「蟻も軍勢」は、小さな虫である蟻(あり)と、多くの兵や勢いを表す軍勢(ぐんぜい)を結びつけたことわざです。蟻は体が小さいものの、女王アリを中心に集団生活を営み、働きアリなどが分業する昆虫です。
一方、「軍勢」は、軍の勢力、威勢、人数、軍隊を表す言葉です。『今昔物語集』(1120年ごろ成立、平安時代後期)にも「軍勢」の語が出ており、もともと人の数と戦う勢いを含んだ言葉として使われてきました。
このことわざでは、ふつうなら軍勢とは思えないほど小さな蟻を、あえて「軍勢」と呼びます。そこに、「一匹では取るに足りないものでも、数がそろえば一つの勢いになる」という比喩の面白さがあります。
同じ発想に近い古い言い方として、「餓鬼も人数」があります。『後撰夷曲集(ごせんいきょくしゅう)』(1672年・江戸時代前期、生白堂行風編)には、この言い方を用いた例があり、頼りなく見える者でも人数の中に加われば多少の役を果たす、という考えが近世の表現の中に出てきます。
また、似た考えを表す「枯れ木も山の賑わい」は、つまらないものでも、ないよりはましであることをいうことわざです。この言い方は、江戸時代の国語辞書『諺苑(げんえん)』(1797年成立、太田全斎著)にも関わる古い俗諺(ぞくげん)の系統に属します。
「蟻も軍勢」は、こうした「弱いもの・つまらないものでも、数があれば役に立つ」という発想を、蟻の集団性と軍勢の語感で短く言い表したものです。蟻の小ささと、軍勢の大きさとの落差が、言葉の印象を強くしています。
ただし、このことわざは「一人一人が尊い」という意味で相手をたたえる表現ではありません。「つまらない人でもたくさんいたほうがよい」という意味を含むため、自分たちの人数合わせを少しへりくだって言う場合や、頼りない人数でも集まれば力になるという場面で使うのが穏当です。
「蟻も軍勢」の使い方




「蟻も軍勢」の例文
- 蟻も軍勢というように、近所の人たちが集まると雪かきは思ったより早く終わった。
- 文化祭の飾り作りは経験者が少なかったが、蟻も軍勢で多くの生徒が手を動かした。
- 新人ばかりの作業班でも、蟻も軍勢で手分けすれば倉庫の片づけは進む。
- 蟻も軍勢と考えて、町内会は短時間だけ手伝える人にも声をかけた。
- 演奏はまだ上手とはいえない部員たちも、蟻も軍勢で応援席を力強く盛り上げた。
- 家族総出で引っ越しの箱詰めに取りかかり、蟻も軍勢で夕方までに準備が整った。
主な参考文献
・公益財団法人日本漢字能力検定協会編『漢検 漢字辞典 第二版』日本漢字能力検定協会、2014年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編集『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・小学館『日本大百科全書』小学館、1984〜1994年。
・生白堂行風編『後撰夷曲集』1672年。
・太田全斎『諺苑』1797年。
・Merriam-Webster, Merriam-Webster.com Dictionary.























