【ことわざ】
医者知者福者
【読み方】
いしゃちしゃふくしゃ
【意味】
友人として有益な人、また、この世で大切にすべき人のこと。医者、知恵のある人、福に恵まれた人を、近づく価値のある人として並べた言葉。


【英語】
・A friend in need is a friend indeed(困ったときに助けてくれる友こそ本当の友)
・be worth one’s weight in gold(非常に役に立ち、かけがえのない存在)
【類義語】
・よき友は知者医者福者(よきともはちしゃいしゃふくしゃ)
【対義語】
・悪友(あくゆう)
「医者知者福者」の語源・由来
「医者知者福者」は、「医者」「知者」「福者」の三つを並べ、近づくべきよい人、世の中で大切にすべき人を表すことわざです。表記は「知者」と書く形のほか、「智者」と書く形も古くから用いられます。
「知者」は、知恵のすぐれた人、道理をわきまえた人を表します。「福者」は、幸運に恵まれた人、また富裕な人を表します。このことわざでは、病を治す医者、知恵を持つ人、生活を助ける力のある人を、人生に役立つ存在としてまとめています。
この言葉の背景には、『徒然草(つれづれぐさ)』(鎌倉時代末期、吉田兼好著)第百十七段の考え方があります。そこでは、よい友として「物くるる友」「医師」「智恵ある友」の三つが挙げられています。
『徒然草』の「物くるる友」は、困ったときに物や財を助けてくれる友を指すと読めます。「医師」は病気のときに命と体を支えてくれる人、「智恵ある友」は迷いや失敗を防ぐ知恵を与えてくれる人です。
この三つの発想が、後に「医者」「智者」「福者」という、より短く整った言い方になったと考えられます。「物くるる友」は、財や幸運に恵まれて人を助けられる「福者」と結びつきやすく、医師は「医者」、智恵ある友は「智者・知者」として言い換えられていきました。
早い用例として、『慶長見聞集』(けいちょうけんもんしゅう)(1614年・慶長19年・江戸時代初期)巻八に、「人の近付くべきは、いしや、智者、福者」という形が出てきます。この場面では、江戸のはやり医者をめぐる話の中で、近づくべき相手として医者・智者・福者が挙げられています。
『慶長見聞集』の文脈では、医者は人の生死に関わる大切な職であり、軽々しく薬を与える危うさもあわせて語られています。そのため、この用例の「医者」は、ただ便利な相手というだけでなく、命を預けるほど重い役割を持つ人として扱われています。
その後、井原西鶴(いはらさいかく)の『西鶴織留(さいかくおりどめ)』(1694年・元禄7年・江戸時代前期)巻四にも、「世の宝は、医者、智者、福者」という形が出てきます。ここでは、医者のいない里には住むなという言い方とともに、人の命を頼む医者の重要さが強く語られています。
『西鶴織留』の用例では、「友人として有益な人」という範囲をこえて、「世の宝」として尊ぶべき人という意味がはっきり出ています。つまり、このことわざは、よい友を選ぶ言葉であると同時に、世の中を支える大切な人をたたえる言葉としても広がりました。
この言葉の中で「医者」が先に置かれるのは、病気やけがが人の命に直接関わるためです。『慶長見聞集』でも『西鶴織留』でも、医者は命を預ける相手として重く扱われており、健康が暮らしの土台であるという考えがよく表れています。
「知者」は、正しい判断や道理を知る人を表し、迷ったときに助言を与える存在です。「福者」は、幸運や富に恵まれ、困る人を支えることができる人を表します。三者を合わせることで、命、知恵、生活の支えという三つの大切なものが示されています。
現在の「医者知者福者」は、特定の職業だけをほめる言葉ではありません。困ったときに本当に助けとなる人、知恵や支えを与えてくれる人は大切にすべきだ、という意味で受け取ると分かりやすいことわざです。
「医者知者福者」の使い方




「医者知者福者」の例文
- 新しい町で病院の先生、学習を助けてくれる先生、生活を気にかけてくれる隣人に出会い、医者知者福者とはこういう人たちをいうのだと思った。
- 祖母は、困ったときに助けてくれる人を大切にしなさいと、医者知者福者のことわざを教えてくれた。
- 医者知者福者という言葉は、健康、知恵、暮らしの支えを与えてくれる人のありがたさを表す。
- 災害のあと、診療に来た医師、正しい情報を伝えた専門家、食料を分けた人々は、地域にとって医者知者福者であった。
- 医者知者福者を友に持つ人は、病気のときも、迷ったときも、生活に困ったときも心強い。
- 医者知者福者は、人とのつながりの中で本当に大切にすべき相手を示すことわざである。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・小学館『デジタル大辞泉』小学館。
・吉田兼好『徒然草』鎌倉時代末期。
・三浦浄心『慶長見聞集』1614年。
・井原西鶴『西鶴織留』1694年。























