【ことわざ】
医者と味噌は古いほどよい
【読み方】
いしゃとみそはふるいほどよい
【意味】
医者は経験を積んだ人ほど診断や治療を安心して任せられ、味噌は年月を経て熟成したものほど味がよいということ。経験や時間によって価値が増すものをたとえる言葉。


【英語】
・Experience is the best teacher(経験こそ最良の先生)
・The older the fiddle, the sweeter the tune(古いバイオリンほど音色が甘い、年を重ねたものほど味わいが増す)
【類義語】
・医者と坊主は年寄りがよい(いしゃとぼうずはとしよりがよい)
・医者と唐茄子は年寄る程よい(いしゃととうなすはとしよるほどよい)
・亀の甲より年の功(かめのこうよりとしのこう)
「医者と味噌は古いほどよい」の語源・由来
「医者と味噌は古いほどよい」は、中国古典の故事から生まれた言葉ではなく、暮らしの中でよく知られた二つのものを並べたことわざです。医者は多くの患者を診て経験を積むほど判断が確かになり、味噌は時間をかけて熟成するほど味がまろやかになる、という考えが中心にあります。
このことわざの「古い」は、ただ年を取っているという意味だけではありません。医者については、長い経験の中で身につけた診断の目、治療の判断、人に向き合う落ち着きなどを指しています。
一方の味噌は、大豆、麹、塩などを仕込み、発酵と熟成を経てできる食品です。時間の働きによって味がまとまり、塩角がやわらぎ、うまみや香りが深まるため、「古いほどよい」という比喩にふさわしい身近な食べ物として用いられました。
味噌は、日本の食生活の中で長く親しまれてきました。室町時代には大豆の生産が増え、農民たちが自家製の味噌を作るようになり、保存食として庶民にも広がっていきました。
戦国時代には、味噌は調味料であるだけでなく、持ち運びやすい栄養食としても重んじられました。戦場での食料として使われたこともあり、保存できる食品としての価値が強く意識されていました。
江戸時代になると、味噌を使った料理や味噌汁が庶民の暮らしに深くなじみました。日常の食卓にある味噌は、年月をかけて味を育てる食品として、人々にとって分かりやすい例になっていきました。
このことわざでは、医者と味噌という、まったく別のものが並べられています。しかし、どちらにも「時間をかけてよさが増す」という共通点があります。そのため、経験を積んだ医者の安心感を、熟成した味噌の味わいに重ねて表しています。
近い発想の言葉には、「医者と坊主は年寄りがよい」「医者と唐茄子は年寄る程よい」などがあります。いずれも、年数を重ねた人やものには、それだけの経験や味わいがあるという考えを表しています。
また、「亀の甲より年の功」も、長い年月を経て身についた知恵や技能を重んじる言葉です。こちらは医者や味噌に限らず、年長者の経験全般をほめる言い方として使われます。
ただし、このことわざは、若い医者や新しいものをすべて否定する言葉ではありません。中心にあるのは、経験を積むことの大切さ、時間をかけて育つ価値への敬意です。
現代では、医療も技術も日々新しくなっています。そのため、「古いほどよい」を文字どおり年齢だけで受け取るより、経験を重ねて確かな力を身につけた人や、時間をかけて深まったものを大切にすることわざとして理解すると自然です。
「医者と味噌は古いほどよい」の使い方




「医者と味噌は古いほどよい」の例文
- 祖父は長年同じ町で診察してきた医師を信頼し、医者と味噌は古いほどよいと言っていた。
- 新しい設備も大切だが、患者の話をよく聞いてきた経験を見ると、医者と味噌は古いほどよいと思う。
- 味噌蔵で熟成した味噌の深い味を知り、医者と味噌は古いほどよいという言葉が実感できた。
- 難しい修理をベテラン職人が落ち着いて直し、医者と味噌は古いほどよいというたとえを思い出した。
- 母は、経験を積んだ先生の説明に安心し、医者と味噌は古いほどよいと静かにうなずいた。
- 医者と味噌は古いほどよいは、時間をかけて身についた経験や味わいの価値を表すことわざである。
主な参考文献
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・みそ健康づくり委員会『みそを知る』1999年。
・Dictionary.com Unabridged, Random House, 2023.
・The American Heritage Idioms Dictionary, Houghton Mifflin Harcourt, 2002.























