【ことわざ】
馬から落ちて落馬する
【読み方】
うまからおちてらくばする
【意味】
同じ意味の言葉を、重なっていることに気づかず続けて言うことをからかう言い方。


【英語】
・tautology(同じ意味を不必要に重ねる言い方)
【類義語】
・重言(じゅうげん)
・冗語(じょうご)
【対義語】
・簡にして要を得る(かんにしてようをえる)
「馬から落ちて落馬する」の語源・由来
「馬から落ちて落馬する」は、「馬から落ちる」と「落馬する」とを重ねた言い方です。「落馬」は、乗っていた馬から落ちることを表すため、この表現は同じ内容を二度言っている形になります。
「落馬」という言葉は、古くから使われてきました。『明衡往来』(11世紀中ごろ・平安時代後期、藤原明衡著)には、馬に乗っていた者が落ちる意味で「落馬」が出てきます。
『平家物語』(13世紀前半ごろ成立、鎌倉時代)にも、「六度まで御落馬ありけり」という形が出てきます。ここでも「落馬」は、馬上から落ちる出来事を表しています。
このように、「落馬」の中には、すでに「馬から落ちる」という意味が含まれています。そのため、「馬から落ちて落馬する」と言うと、同じ意味を重ねるおかしさがはっきりします。
同じ意味を重ねた言い方は、「重言」と呼ばれます。「重言」は「同じ意味のことばを重ねて用いた表現」を指し、「半紙の紙」「後の後悔」「犯罪を犯す」なども同じ種類の例に入ります。
「重言」という言葉そのものにも、古い用例があります。同じことを二度言う意味では、元徳4年(1332年・鎌倉時代末期)の文書に用例があり、同じ意味の言葉を重ねる意味では、『一滴集』(1440年・室町時代)に用例があります。
「馬から落馬する」という少し短い形は、重言の代表例として辞書にも挙げられています。「馬から落ちて落馬する」は、そこに「落ちて」を加えることで、重なりの滑稽さをいっそう分かりやすくした形です。
明治時代の文学にも、この言い方が出てきます。斎藤緑雨の『かくれんぼ』(明治24年、斎藤緑雨著)には、「馬から落ちて落馬した」の口調にならえば、という表現があり、重なった言い方を面白く扱う例になっています。
また、馬に関する言い伝えを扱う中で、「馬から落ちて落馬する」は、馬をめぐる多くの表現の一つとして挙げられています。馬は日本の暮らしで乗用や運搬に用いられてきた身近な動物であり、その身近さが、こうした言い方の分かりやすさにもつながっています。
現在では、このことわざは、実際に馬から落ちる場面よりも、言葉の重なりをからかう場面で使います。余分な言葉を重ねず、意味が通る言い方を選ぶ大切さを教える表現として受け取られています。
「馬から落ちて落馬する」の使い方




「馬から落ちて落馬する」の例文
- 「後で後悔する」は、馬から落ちて落馬するような言い方になっている。
- 作文では、馬から落ちて落馬するような重なった表現を避けたい。
- 司会者の「一番最初に始めます」という言い方は、馬から落ちて落馬するに近い。
- 友人に「犯罪を犯す」は馬から落ちて落馬するような表現だと注意された。
- 説明文を見直すと、馬から落ちて落馬するような余分な言葉がいくつもあった。
- 発表の前に原稿を読み返し、馬から落ちて落馬するような言い回しを直した。
主な参考文献
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・斎藤緑雨『かくれんぼ』1891年。
・Merriam-Webster, Merriam-Webster.com Dictionary.























