【ことわざ】
余り円きはまろび易し
【読み方】
あまりまろきはまろびやすし
【意味】
人柄があまりに温和・円満すぎると、人に付け込まれやすく、かえって失敗や困りごとを招きやすいということ。


【英語】
・too much of a good thing(よいものでも、度が過ぎるとよくないこと)
【類義語】
・円くとも一角あれや人心(まるくともひとかどあれやひとごころ)
「余り円きはまろび易し」の語源・由来
「余り円きはまろび易し」は、人の心や性格を「円い形」にたとえたことわざです。丸い石や玉は角がないため、少し力が加わるところがりやすくなります。その具体的な姿を、人があまりに温和で、何でも受け入れてしまう様子に重ねています。「円い」は、形だけでなく、かどかどしくなく穏やかで円満な性格を表す言葉としても使われます。
古い形として重要なのは、『譬喩尽(たとえづくし)』(1786年序・江戸時代後期、松葉軒東井編)に入る「円くとも 一角あれよ 人心、あまり円きは 転び易きぞ」という言い方です。『譬喩尽』は、ことわざを中心に、詩歌・童謡・流行語・方言などを広く集め、いろは順に配列した書物です。
この古い形では、前半の「円くとも一角あれよ人心」が、ただ穏やかなだけでなく、心には少しの「角」、つまり譲れない意志や筋の通ったきびしさも必要だと示しています。後半の「あまり円きは転び易きぞ」が、その理由として、あまりに丸いものはころがりやすいと続きます。現在の「余り円きはまろび易し」は、この後半をことわざとして独立させた形に近いといえます。
「まろぶ」は、古風な響きをもつ言葉で、「ころがる」「ひっくりかえる」「倒れる」という意味を表します。現在の表記で「転び易し」と書けば意味は分かりやすくなりますが、「まろび易し」とすると、古い言い回しの調子が残り、丸いものがころころと転がってしまう比喩がより強く感じられます。
また、『道歌四百集 通俗教訓』(1912年、鏡影編)にも、「円くとも、一角あれや、人心あまりまろきは、ころびやすきぞ」と近い形が収められています。ここでは、三十一音の歌に近い形で、人の心のあり方を戒める言葉として伝わっています。
表記には「円」「丸」、「転び」「まろび」などの揺れがあります。意味の骨組みは同じで、角のない丸いものがころがりやすいという物の性質から、あまりに人当たりがよすぎる人は、人に流されたり、付け込まれたりしやすいという教えへ広がっています。
このことわざは、やさしさを捨てよという言葉ではありません。人と仲よくする円満さを大切にしながらも、必要なときには断る、注意する、自分の考えを持つ、という「一角」を忘れないように教えることわざです。
「余り円きはまろび易し」の使い方




「余り円きはまろび易し」の例文
- 頼まれるたびに残業を引き受けて体調を崩した兄は、余り円きはまろび易しを身をもって知った。
- 友人のわがままを何でも聞いていたら約束まで軽く扱われ、余り円きはまろび易しだと反省した。
- 地域の係を断れずに一人で抱え込む母を見て、父は余り円きはまろび易しと心配した。
- 店長はお客にていねいに接しながらも、無理な要求には応じない姿勢を保ち、余り円きはまろび易しを避けている。
- 委員長が全員の希望を通そうとしすぎて準備が進まず、余り円きはまろび易しという結果になった。
- 余り円きはまろび易しというように、親切でいることと、自分の限界を示すことは両立する。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・松葉軒東井編、宗政五十緒校訂『たとへづくし 譬喩尽』同朋舎、1979年。
・鏡影編『道歌四百集 通俗教訓』弥高舎、1912年。
・Cambridge University Press & Assessment『Cambridge Dictionary』.























