【ことわざ】
替え着なしの晴れ着なし
【読み方】
かえぎなしのはれぎなし
【意味】
いつもよい衣服を着ているが、それ一枚だけで、ほかに着替える衣服を持っていないこと。


【類義語】
・常常綺羅の晴れ着なし(じょうじょうきらのはれぎなし)
・着たきり雀(きたきりすずめ)
・一張羅(いっちょうら)
「替え着なしの晴れ着なし」の語源・由来
「替え着なしの晴れ着なし」は、「替え着」と「晴れ着」を対にして成り立つ言い方です。替え着は、着替えの着物や衣服を指し、晴れ着は、表立った場面や改まった席に着て出る衣服を指します。
晴れ着という言葉は、『日葡辞書(にっぽじしょ)』(1603〜1604年、日本イエズス会宣教師編)の時代から、改まった場に着ていく衣服を表す言葉として出てきます。つまり、昔から日常の衣服と、晴れの日に着る衣服とは、暮らしの中で区別されてきました。
このことわざでは、いつもよい衣服を着ていても、それが一枚きりなら、いざ着替えが必要なときにも、晴れの日にも困る、という意味になります。見た目の立派さよりも、実際に取り替えられる備えがあるかどうかを言い当てる、生活感のある表現です。
同じ考えにもとづく古い言い方に、「常常綺羅の晴着なし」があります。「常綺羅」は、ふだんからよい着物を着ていること、またその美しい衣服を指す言葉で、江戸時代の川柳や読本にも用例があります。
『諺苑(げんえん)』(1797年・江戸時代後期、太田全斎著)は、俗語や俗諺を集め、いろは順に配して語釈や出典を示した七巻の国語辞書です。その中に「常常綺羅の晴着なし」があり、いつも上等の美しい着物で着飾っているために、晴れのときに着る衣服がない、という意味で出てきます。
ここで言う「晴着なし」は、ただ服を一枚しか持っていないというだけではありません。ふだんから上等の服を着ているため、特別な日にふさわしい別の衣服を用意できない、という暮らしの不便さを表しています。
近い言葉の「一張羅」は、持っている衣服の中で最もよいもの、またはほかには持たない一枚きりの衣服を指します。江戸時代前期の『男色大鑑』(1687年、井原西鶴著)にも、上等の一着を取り出す意味で用例があり、一枚だけのよそゆきという発想が早くからあったことが分かります。
また、「着たきり雀」は、今着ている衣服だけで着替えを持っていないことをいう言葉です。江戸時代後期の『浮世風呂』(1809〜1813年、式亭三馬著)にも「着た限雀」と出ており、着替えのない状態を軽くしゃれた言い方で表す流れがうかがえます。
このように、「替え着なしの晴れ着なし」は、晴れの日の衣服を大切にした暮らしの感覚と、一枚だけの衣服に頼る不便さとが結びついたことわざです。外側は立派に整っていても、実際の備えが足りなければ困るということを、衣服のたとえで分かりやすく伝えています。
「替え着なしの晴れ着なし」の使い方




「替え着なしの晴れ着なし」の例文
- 兄は毎日きれいなジャケットを着ているが、実は替え着なしの晴れ着なしだった。
- 式典の前日に白いシャツを汚してしまい、替え着なしの晴れ着なしで家中が慌てた。
- 旅行に上等な服を一枚しか持っていかなかったため、雨にぬれて替え着なしの晴れ着なしになった。
- いつも立派なスーツ姿の店長も、予備を持っていなければ替え着なしの晴れ着なしだ。
- 見た目だけ整えて着替えを用意しない暮らしは、替え着なしの晴れ着なしになりやすい。
- 祭りの日に着る服までふだんと同じ一枚しかなく、替え着なしの晴れ着なしと気づいた。
主な参考文献
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・平凡社編『改訂新版 世界大百科事典』平凡社。
・太田全斎『諺苑』1797年。
・日本イエズス会宣教師編『日葡辞書』1603〜1604年。























