【ことわざ】
男猫が子を生む
【読み方】
おとこねこがこをうむ
【意味】
現実には決して起こり得ないことのたとえ。


【英語】
・when pigs fly(決して起こらないこと)
【類義語】
・岩に花咲く(いわにはなさく)
・煎り豆に花(いりまめにはな)
「男猫が子を生む」の語源・由来
「男猫が子を生む」は、雄の猫が子を産むという、現実には起こり得ない出来事をそのままたとえにしたことわざです。「男猫」は雄の猫を指し、このことわざでは「おとこねこ」と読みます。
雄の猫は子の父親にはなりますが、自ら妊娠して子を産むことはありません。そのため、「男猫が子を生む」という一文だけで、物事の成り立ちに反する話や、どうしても実現しないことを強く印象づけられます。
表現を構成する「男猫」という言葉の古い実例は、井原西鶴の遺稿を北条団水が編集した『西鶴織留(さいかくおりどめ)』(1694年・江戸時代前期、井原西鶴作、北条団水編)に出てきます。そこには、火の用心のため、顔つきの賢そうな「男猫(オネコ)」を一匹飼うように、という記述があります。ここでの「男猫」は、ことわざではなく、雄の猫そのものを指しています。
この古い用例では「男猫」を「おねこ」と読んでいますが、ことわざの形では「おとこねこ」と読みます。同じ表記でも、単独の名詞として使う場合と、言い習わされた一文の中で使う場合とでは、読み方が異なっています。
このことわざには、特定の人物が登場する昔話や、ある事件を語った物語が結び付いているわけではありません。雄の猫が出産することはないという、誰にでも分かる事実を利用し、あり得ないことを端的に表す形として生まれたと考えられます。
日本では古くから、現実には起こり得ない現象を示し、不可能なことを表すたとえが使われてきました。松江重頼編『毛吹草(けふきぐさ)』(1638年序・1645年刊、江戸時代前期)には、「煎大豆に花のためしか除夜の雪」とあり、火で煎って芽を出す力を失った豆に花が咲くことを、ありそうもない出来事のたとえにしています。
また、井原西鶴の『好色二代男(こうしょくにだいおとこ)』(1684年・江戸時代前期)には、「岩に花咲くここちして」とあります。花を咲かせない岩に花が咲くように思われたという言い方で、思いもよらないことが実現した驚きを表しています。
「男猫が子を生む」も、煎り豆に花が咲く、岩に花が咲くといった言い方と同じく、本来その働きをもたないものに、あり得ない現象が起こる形を作っています。ただし、「煎り豆に花」などには、望みの薄かったことが奇跡的に実現するという用法もありますが、「男猫が子を生む」は、とうていあり得ないことを示す意味が明確です。
表記には、入力された「男猫が子を生む」のほか、「男猫が子を産む」もあります。また、「男猫」を、意味の分かりやすい「雄猫」に替え、「雄猫が子を生む」とする形も用いられます。いずれも、雄の猫が出産するという不可能な出来事をたとえにしたものです。
現在、このことわざは、奇抜なうそや、道理に反した主張、物事の性質から見て実現しようのない計画などを表すときに用います。努力すれば実現できる難しい目標まで「男猫が子を生む」と決めつけるのではなく、初めから成り立たない話に対して使うことが大切です。
「男猫が子を生む」の使い方




「男猫が子を生む」の例文
- 月を素手でつかんで家へ持ち帰るという計画は、男猫が子を生むような話だ。
- 過ぎ去った昨日を消して同じ一日をやり直すなど、男猫が子を生むに等しい。
- 燃料をまったく使わずに永遠に動き続けるというその機械は、男猫が子を生むような代物だった。
- 海の底から太陽を拾ってくるという話を聞き、祖父は男猫が子を生むようなものだと笑った。
- 影だけを袋に詰めて売れるという商人の主張は、男猫が子を生むほどあり得ない話だった。
- 四角い円を描けという命令は、男猫が子を生むのと同じく、初めから成り立たない。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・三省堂編修所編『三省堂故事ことわざ・慣用句辞典』三省堂、1999年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・松江重頼編『毛吹草』1645年。
・井原西鶴『好色二代男』1684年。
・井原西鶴作、北条団水編『西鶴織留』1694年。
・Cambridge University Press, Cambridge Advanced Learner’s Dictionary.























