【ことわざ】
親の心子知らず
【読み方】
おやのこころこしらず
【意味】
親が子を思う気持ちや苦労は子に伝わりにくく、子はそれを知らずに勝手なふるまいをしがちであること。


【英語】
・Children don’t know how much their parents care for them(子どもは親がどれほど自分を思っているか分からない)
【類義語】
・親の思うほど子は思わぬ(おやのおもうほどこはおもわぬ)
・子を持って知る親の恩(こをもってしるおやのおん)
【対義語】
・子の心親知らず(このこころおやしらず)
「親の心子知らず」の語源・由来
「親の心子知らず」は、中国の古い故事から出た故事成語ではなく、日本の古い物語に早くから形が出てくることわざです。親が子を思う深い愛情や心配と、それを子がなかなか理解しないすれ違いを、短く言い表しています。
古い用例は、『義経記(ぎけいき)』(室町時代、作者未詳)巻七に出てきます。『義経記』は、源義経(みなもとのよしつね)の生涯や、弁慶、静御前、忠信たちとの関わりを語る物語で、義経伝説を集めた作品として伝わっています。
『義経記』巻七では、弁慶(べんけい)が「あはれや殿、おやのこころを子しらずとて、人の心は知り難し」と語ります。これは、親が子を思う心でさえ子には分かりにくいのだから、人の心を知ることは難しい、という意味の言い方です。
この場面で大切なのは、「親の心子知らず」が、ただ子どもを責める言葉としてだけ出ているわけではない点です。弁慶の言葉は、人の心を知ることの難しさを表す中で使われています。親子という身近な関係でさえ、思いが通じないことがあるという例として、この表現が働いています。
『義経記』に出る形は「おやのこころを子しらず」で、現在よく使われる「親の心子知らず」とは少し形が異なります。古い用例では「親の心を子が知らない」という文に近い形でしたが、後に「親の心子知らず」という短くまとまった形になり、ことわざとして覚えやすく定着したと考えられます。
意味の中心も、古い用例から現在まで大きく変わっていません。親が子を大事に思い、心配し、苦労しているのに、子はその思いを十分に分からず、勝手な行動をしてしまうという内容です。現在では、親子だけでなく、先生と生徒、先輩と後輩、世話をする人とされる人のように、相手のためを思う気持ちが伝わらない場面にも用いられます。
ただし、このことわざは、子どもを一方的に悪く言うためだけの表現ではありません。子どもは経験が浅く、親の苦労や心配をすぐには理解しにくいものだ、という人間関係の自然なすれ違いも含んでいます。そのため、「親の心子知らず」と言うときには、親の愛情の深さと、子がそれに気づくまでの時間のずれがともに表されています。
「親の心子知らず」の使い方




「親の心子知らず」の例文
- 母が毎朝体調を気にしてくれたのをうるさがっていた弟は、あとで親の心子知らずだったと反省した。
- 父が進路の資料を集めてくれたのに、干渉だと思っていた兄は親の心子知らずの態度を取った。
- 遠足の前に母が雨具を持たせた理由を知らずに文句を言った私は、まさに親の心子知らずだった。
- 担任が忘れ物を防ぐために何度も連絡帳を確認させたのに、生徒たちは親の心子知らずのように面倒がった。
- 夜道を心配して迎えに来た母に冷たい返事をした姉は、親の心子知らずだったと後悔した。
- 新人の将来を考えて厳しく注意した上司に反発する姿は、親の心子知らずに重なった。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修『デジタル大辞泉』小学館。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・作者未詳『義経記』室町時代。
・Electronic Dictionary Research and Development Group『JMdict』。























