【ことわざ】
男の目には糸を張れ、女の目には鈴を張れ
【読み方】
おとこのめにはいとをはれ、おなごのめにはすずをはれ
【意味】
男の目はきりりとまっすぐなのがよく、女の目はぱっちりと大きいのがよいというたとえ。


「男の目には糸を張れ、女の目には鈴を張れ」の語源・由来
「男の目には糸を張れ、女の目には鈴を張れ」は、男女それぞれに好ましいと考えられた目の形を、「糸」と「鈴」にたとえたことわざです。男の目は、ぴんと張った糸のように細く、きりりとまっすぐなのがよく、女の目は、鈴を張ったようにぱっちりと大きいのがよいという意味です。
前半の「糸を張れ」は、細い糸をまっすぐに張った形を目元に重ねています。目を上下に大きく開くのではなく、横へすっきりと伸びた、引き締まった目を表すたとえです。
後半の「鈴を張れ」は、女性の目がぱっちりと丸く、大きいことを表します。「鈴を張ったよう」という言い方も、女性の大きく美しい目を形容する表現として使われてきました。
このことわざの古い用例は、松葉軒東井編『譬喩尽(たとえづくし)』(1786年序・江戸時代後期)に出てきます。『譬喩尽』は八巻から成る書物で、ことわざを中心に、詩歌・童謡・流行語・方言などを広く集め、いろは順に並べています。
『譬喩尽』は、天明六年、すなわち1786年に序が書かれ、その後も寛政十一年、すなわち1799年ごろまで増補されました。この書物に収められた段階で、「糸」と「鈴」を並べ、男女の目の美しさを表す形が、すでに言い習わされていたことが分かります。
古い形では、後半の「女」を「おなご」と読みます。一方、現代では「おんな」と読むこともあり、「男の目には糸を張れ、女の目には鈴を張れ」という同じ表記に、二通りの読み方が伝わっています。
前半を「糸を引け」とする、「男の目には糸を引け、女の目には鈴を張れ」という形もあります。「張れ」と「引け」は異なりますが、どちらも、糸を細くまっすぐに伸ばした形を男の目に重ねる点では共通しています。
また、後半だけを取り出した「女の目には鈴を張れ」も用いられます。長いことわざのうち、女性のぱっちりとした目を表す部分が独立し、容姿を形容する言い方として使われるようになりました。
明治28年、すなわち1895年の『文藝倶楽部(ぶんげいくらぶ)』に載った思案外史の「雑録」には、「所謂鈴を張った如くにぱッちりとして」とあります。ここでは、ことわざ全体ではなく、「鈴を張ったよう」という部分が、女性の大きく開いた目を直接表す比喩として使われています。
このように、1786年の『譬喩尽』に収められた形から、後の「糸を引け」という異形や、「鈴を張ったよう」という短い表現へと、言い回しに変化が生まれました。しかし、男の目は細くまっすぐに、女の目は大きくぱっちりと、という基本の意味は、変わらず受け継がれています。
このことわざは、男女の容姿に別々の理想を求めた、昔の美意識を伝える表現です。現代では、目の美しさを性別や一つの形だけで決める言葉としてではなく、かつて好まれた顔立ちの基準を示すことわざとして受け取るのがよいでしょう。
「男の目には糸を張れ、女の目には鈴を張れ」の使い方




「男の目には糸を張れ、女の目には鈴を張れ」の例文
- 江戸時代の美意識を調べる中で、男の目には糸を張れ、女の目には鈴を張れということわざを知った。
- 男の目には糸を張れ、女の目には鈴を張れという言葉どおり、その絵師は武士の目を細く、姫の目を大きく描いた。
- 祖母は昔の俳優の写真を見ながら、男の目には糸を張れ、女の目には鈴を張れと語った。
- 時代劇の化粧には、男の目には糸を張れ、女の目には鈴を張れという古い美意識が表れていた。
- 男の目には糸を張れ、女の目には鈴を張れは、男女の顔立ちを対照的に表した古いことわざである。
- 美術史の授業では、男の目には糸を張れ、女の目には鈴を張れを取り上げ、時代による美意識の違いを考えた。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・松葉軒東井編『譬喩尽』1786年序。
・思案外史「雑録」『文藝倶楽部』1895年8月20日。























