【ことわざ】
書いた物が物を言う
【読み方】
かいたものがものをいう
【意味】
口で言った約束や主張よりも、書いて残した文書は後の証拠として強い力をもつということ。証文や契約書などの書類が、争いの場面で有力な証拠になることをいう。


【英語】
・get it in writing.(あとで証拠になるように書面にしてもらう)
【類義語】
・証文が物を言う(しょうもんがものをいう)
・論より証拠(ろんよりしょうこ)
「書いた物が物を言う」の語源・由来
このことわざの根には、書き残した文書を後日の論拠とする考えがあります。証文(しょうもん)は、後々の論拠とするための文書、ある事実を証明する文書を指し、金品の貸借や約束事を証明する文書という意味でも使われてきました。
古くは、土地・金銭・貸し借りなどをめぐる争いで、文書が主張を支える役目を果たしました。日本の訴訟では、平安時代後半から中世にかけて、当事者が自分の主張を支える文書を提出し、それを証文と呼んだ例があり、1232年に定められた御成敗式目(ごせいばいしきもく)にも、双方の証文の理非が明らかな場合の扱いが定められています。
「書いた物が物を言う」という形に近い古い用例は、『藍染川(あいぞめがわ)』(1684年・江戸時代前期、浄瑠璃)に出てきます。そこには「よくも生面さげ是迄はきたるよな書いた物がものいふぞ」とあり、書いた物が相手を責める確かな証拠として働く場面で、この言い方が使われています。
『藍染川』は、1684年に竹本義太夫が大坂・道頓堀(どうとんぼり)に竹本座をおこしたころに興行された浄瑠璃の一つです。上演年表にも、1684年7月中旬、大阪で『藍染川』が義太夫の浄瑠璃として記録されており、このことわざが江戸時代前期の語り物の言葉の中で用いられていたことが分かります。
ここでいう「物を言う」は、単に声を出して話すという意味だけではありません。「効果を発揮する」「効き目がある」という意味もあり、「書いた物が物を言う」は、紙に書かれた内容が、いざという時に力を発揮する、という言い方になっています。
つまり、このことわざは、文書が実際に声を出すという意味ではなく、書かれた約束や証拠が、人の言い逃れを許さないほど強く働くことを表します。口約束は記憶違いや言い争いになりやすい一方、証文や契約書は内容が残るため、後になって真実を確かめるよりどころになります。
現在でも、友人同士の貸し借り、仕事上の契約、学校や地域の取り決めなどで、約束を文書にして残すことは大切です。このことわざは、相手を疑えというより、たいせつな約束ほど、互いに困らないよう書いて残しておくのがよい、という生活の知恵を伝える言葉といえます。
「書いた物が物を言う」の使い方




「書いた物が物を言う」の例文
- 口で約束しただけでは不安なので、書いた物が物を言うと思い、貸した本の返却日をメモに残した。
- 契約の内容をめぐって意見が分かれたが、書いた物が物を言う形で、合意書の記載が確認された。
- 祖父は、土地の境界については書いた物が物を言うから、古い書類を大切に保管していた。
- 友人との共同作業でも、役割分担を記録しておけば、あとで書いた物が物を言う。
- 会議で決まった予算額について、書いた物が物を言うように議事録を残した。
- 口約束だけで進めた計画は後でもめやすく、書いた物が物を言う場面になってから困ることがある。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・小学館『大辞泉』編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2006年。
・Oxford University Press『Oxford Advanced Learner’s Dictionary』.























