【ことわざ】
犬が西向きゃ尾は東
【読み方】
いぬがにしむきゃおはひがし
【意味】
当然のこと、わかりきったこと。また、それをわざわざ取り立てて言うこと。


【英語】
・it goes without saying(言うまでもない)
・self-evident(証明や説明がいらないほど明らかな)
【類義語】
・雨の降る日は天気が悪い(あめのふるひはてんきがわるい)
「犬が西向きゃ尾は東」の語源・由来
「犬が西向きゃ尾は東」は、犬の頭が西を向けば、体の後ろにある尾が東を向く、という向きの関係をそのまま用いたことわざです。西と東を反対の方角として並べ、犬の頭と尾の位置関係を用いることで、だれが見ても争いにくい明白な事柄を、目に浮かびやすく表しています。
このことわざは、単に「正しいこと」を表すだけではありません。正しいことには違いないけれど、あまりに当然なので、わざわざ言う必要がないというおかしみを含みます。「雨の降る日は天気が悪い」と同じく、内容そのものよりも、「それを取り立てて言うこと」のほうに重点がある言い方です。
古い段階の形としては、現在の見出しと完全に同じものだけが用いられていたわけではありません。明治39年の『日本俚言大全』には「犬が西向きゃ尾が東」という形が収められ、明治43年の藤井乙男編『諺語大辞典』には、「犬が東向けば尾が西向く」という、方角を入れ替えた形が採られています。
「犬が西向きゃ尾が東」と「犬が東向けば尾が西向く」は、方角の置き方こそ違いますが、犬の頭と尾が反対向きになるという発想は同じです。どちらも、目の前の事実としてすぐに分かることを言うため、言い回しの違いをこえて、「当たり前であること」を表す表現としてつながっています。
戦後には、現在よく用いられる「犬が西向きゃ尾は東」の形が広まりました。昭和34年、江藤淳の評論『作家は行動する』にも「犬が西むきゃ尾は東」という現在に近い形が出てきており、わかりきった話をたとえる表現として使われています。
このように、「犬が西向きゃ尾は東」は、中国の古い故事に由来する言葉ではなく、犬の姿をもとにした日常的なたとえから広まったことわざです。方角という分かりやすい対比を用いることで、「それは当然だ」「ことさら言うほどではない」という意味を、短く、少しユーモラスに伝える表現として定着しました。
「犬が西向きゃ尾は東」の使い方




「犬が西向きゃ尾は東」の例文
- 水をこぼせば床がぬれるという説明は、犬が西向きゃ尾は東のような話だ。
- 寒い日に薄着で外へ出れば冷えるというのは、犬が西向きゃ尾は東だ。
- 電気を消せば部屋が暗くなるなど、犬が西向きゃ尾は東というものだ。
- 準備をしなければ発表で困るのは、犬が西向きゃ尾は東の理屈だ。
- 材料を入れ忘れれば料理の味が変わるとは、犬が西向きゃ尾は東の話だ。
- 約束の時間に遅れれば相手を待たせるのは、犬が西向きゃ尾は東といえる。
主な参考文献
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・馬場俊臣「『犬』に関することわざ(1)――『犬』をどう捉えてきたか――」『札幌国語研究』第24号、北海道教育大学札幌校国語国文学会、2019年。
・藤井乙男編『諺語大辞典』有朋堂書店、1910年。
・ことわざ研究会編、北村孝一・時田昌瑞監修『ことわざ研究資料集成7 日本俚言大全』大空社、1994年。
・Cambridge University Press『Cambridge Dictionary』。
・HarperCollins Publishers『Collins English Dictionary』。























