【ことわざ】
鐘の音がよく聞こえると雨
【読み方】
かねのねがよくきこえるとあめ
【意味】
遠くの鐘の音がいつもよりはっきり聞こえると、雨が近いとする言い伝え。


【類義語】
・遠くの音が聞こえるときは雨(とおくのおとがきこえるときはあめ)
・汽車の音が聞こえると雨になる(きしゃのおとがきこえるとあめになる)
「鐘の音がよく聞こえると雨」の語源・由来
「鐘の音がよく聞こえると雨」は、空や雲だけでなく、身近な物音の変化から天気を見通そうとした天気俚諺(てんきりげん)の一つです。天気俚諺とは、天候について昔から伝えられてきた言い伝えを指します。
昔の人々にとって、天気は、農作業、漁、航海、旅などに深く関わる大切な情報でした。科学的な天気予報がなかった時代には、雲の形、風向き、生き物の動き、音の響き方などを注意深く観察し、その経験を言葉にして受け継いでいました。
鐘は、寺院などで時刻を知らせるために打ち鳴らされ、その音は遠くまで響きました。同じ場所から決まった時刻に聞こえてくるため、日による聞こえ方の違いに気づきやすく、天候を知る手掛かりにもなりました。
このことわざには、特定の作者や一つの出来事は伝わっていません。各地の人々が、雨の近い日に、遠くの鐘が普段よりも近く、はっきり聞こえることを重ねて経験し、それぞれの土地で言い伝えたものと考えられます。
古い記録の一つに、松山市三津浜付近の天候に関する経験を江戸時代末にまとめた『日和相伝記』があります。そこには「鐘の音川の水が近く聞える時は雨」とあり、鐘や川の水音がいつもより近く聞こえることを、雨の前兆としています。
この記録では、鐘だけを取り上げるのではなく、川の水音も同じ現象として並べています。音を出す物の種類よりも、遠方の物音が近く聞こえるという変化そのものに、人々が注目していたことが分かります。
栃木県南部では、「筑波山から朝夕鐘の音が聞こえると天気が変わる」と伝えられてきました。同じ地域には、山彦の響き方や、鉄道の音が聞こえてくる方向によって晴雨を見分ける言い伝えもあります。
埼玉県北本市で集められた天気俚諺にも、「鐘の音がよく聞えると雨になる」という例があります。そこでは、「列車の音が東からよく聞えると天気は下り坂」という言い伝えが十二例集められており、鐘に代わって、汽車や列車の音も天気の目安になっていました。
この聞こえ方の変化は、気温による音の進み方と関係しています。前線が近づいて上空に暖かい空気が入ると、地表付近よりも上空のほうが暖かくなることがあり、上へ広がった音が地表のほうへ曲げられるため、遠くの鐘が聞こえやすくなります。
ただし、遠くの音がよく聞こえれば、必ず雨になるわけではありません。冬の晴れた夜にも、地面付近の空気が強く冷やされて同じような気温の重なり方が生じ、雨が降らなくても遠方の音がよく届くことがあります。
さらに、音の届き方は、風向き、雲の状態、周囲の地形、音が来る方向にも左右されます。そのため、このことわざは、全国どこでも同じように当たる法則ではなく、それぞれの土地で積み重ねられた経験にもとづく目安です。
このように、「鐘の音がよく聞こえると雨」は、遠くの音の響き方と天候の変化との結び付きを言い表したことわざです。身の回りの小さな変化を注意深く観察してきた、昔の人々の生活の知恵が込められています。
「鐘の音がよく聞こえると雨」の使い方




「鐘の音がよく聞こえると雨」の例文
- 祖父は、鐘の音がよく聞こえると雨という言い伝えを思い出し、傘を持って出かけた。
- 理科の観察では、鐘の音がよく聞こえると雨が本当に当たるか、一か月間記録した。
- 遠くの寺の鐘がはっきり響いたので、鐘の音がよく聞こえると雨を目安に洗濯物を取り込んだ。
- 祭りの準備中、鐘の音がよく聞こえると雨という昔の知恵にならい、道具を屋内へ移した。
- 農家の人々は、鐘の音がよく聞こえると雨を天気の目安の一つとして伝えてきた。
- 鐘の音がよく聞こえると雨は、遠くの物音の変化から空模様を読み取ることわざである。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・小学館編『日本大百科全書』小学館、1984〜1994年。
・平凡社編『改訂新版 世界大百科事典』平凡社、2007年。
・愛媛県編『愛媛県史 民俗 上』愛媛県、1983年。
・北本市教育委員会市史編さん室編『北本市史 第1巻 通史編1』北本市教育委員会、1994年。























