【ことわざ】
蟻の思いも天に届く
【読み方】
ありのおもいもてんにとどく
【意味】
力の弱い者でも、一心に願い、粘り強く努力すれば望みをかなえられるというたとえ。


【英語】
・Where there’s a will, there’s a way.(意志があれば道は開ける)
・Faith can move mountains.(強い信念は大きな困難を動かす)
【類義語】
・一念天に通ず(いちねんてんにつうず)
・念力岩をも徹す(ねんりきいわをもとおす)
・一念岩をも徹す(いちねんいわをもとおす)
・蚤の息さえ天に上る(のみのいきさえてんにのぼる)
「蟻の思いも天に届く」の語源・由来
「蟻の思いも天に届く」は、地面を歩く小さな蟻と、はるか高い天とを対比させた言い方です。取るに足りないほど小さなものでも、思いを一つにして願えば、その思いは天に達するというたとえから、力の弱い者でも望みをかなえられるという意味になりました。
この表現に近い発想は、かなり古くからあります。『名語記(みょうごき)』(1268〜1275年ごろ成立、鎌倉時代、経尊著)には、「蚤の息さえ天に上る」にあたる言い方が出てきます。蚤のように小さいものの息でさえ天にのぼるというたとえで、弱い者でも一心になれば物事をなし遂げられるという考えを表します。
「蟻」を用いた形の古い例としては、『御伽夜話』(1745年・江戸時代中期)に「蟻(アリ)の思(オモ)ひも天(テン)に上(ノボ)るとかや」とあります。ここでは、現在よく使われる「届く」ではなく「上る」という形で、蟻の思いが天へ向かってのぼるという言い方になっています。
この「上る」は、後に「登る」「昇る」とも書かれ、「蟻の思いも天に登る」という形でも用いられました。現在の「届く」は、思いが天へ向かうだけでなく、目的のところまで達するという結果を、よりはっきり表す形です。
江戸時代後期の人情本『契情肝粒志(けいせいきもつぶし)』(1825〜1827年序、鼻山人著)にも、「思う念力岩をも通す」という言い方に続いて、蟻の思いでさえ遠くまで届く、という趣旨のせりふが出てきます。この例から、蟻のように小さいものの思いが届くという発想が、強い念願や努力を表す言い方と結びついて使われていたことが分かります。
また、「一念天に通ず」は、一つのことに心を集中すれば、その真心が天に通じ、物事を成し遂げられるという意味です。「念力岩をも徹す」や「一念岩をも徹す」も、強い信念で事に当たれば困難を越えられるという考えを表します。「蟻の思いも天に届く」は、これらと同じ系統の考えをもちながら、蟻という小さな生き物を用いることで、弱い立場の者でも望みをかなえられるという励ましを、より親しみやすく表しています。
ただし、このことわざは、何もしなくても願いがかなうという意味ではありません。小さな力であっても、強く願い、あきらめずに努力し続けることによって、高い目標に近づけるという考えを表す言葉です。
「蟻の思いも天に届く」の使い方




「蟻の思いも天に届く」の例文
- 弱小チームだったが、毎朝の練習を重ね、蟻の思いも天に届くように地区大会で初勝利をあげた。
- 一人で始めた地域清掃が少しずつ広がり、蟻の思いも天に届くという言葉どおり町全体の活動になった。
- 病気の研究を続けた医師の努力は、蟻の思いも天に届くように新しい治療法へつながった。
- 最初は誰にも相手にされなかった提案も、蟻の思いも天に届くと信じて説明を重ねた結果、採用された。
- 家計を助けるために小さな貯金を続けた母の姿に、蟻の思いも天に届くということわざを思い出した。
- 友人を励ます手紙を何度も送り続けたことが心を動かし、蟻の思いも天に届く結果となった。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修、小学館国語辞典編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・経尊『名語記』1268〜1275年。
・安勝子『御伽夜話』1745年。
・鼻山人『契情肝粒志』1825〜1827年。
・Cambridge University Press『Cambridge Dictionary』.























