【ことわざ】
土器の欠けも用あり
【読み方】
かわらけのかけもようあり
【意味】
役に立たなさそうなものでも、何かの役に立つことがあるということ。


【英語】
・Every cloud has a silver lining.(どんな困った状況にもよい面がある)
・One person’s trash is another person’s treasure.(ある人にとって不要なものも、別の人には宝になる)
【類義語】
・大鋸屑も取柄(おがくずもとりえ)
・茶殻も肥になる(ちゃがらもこえになる)
・腐り縄にも取り所(くさりなわにもとりどころ)
【対義語】
・破れ鍋二度の役に立たず(われなべにどのやくにたたず)
「土器の欠けも用あり」の語源・由来
「土器」は、ここでは「どき」ではなく「かわらけ」と読みます。かわらけは、釉薬(うわぐすり)をかけずに素焼きで作った器で、特に盃を指し、古くは食器として、後には灯明の油を入れる器としても用いられました。
かわらけは、漢字で「土器」と書きます。中世によく使われた土器で、食器のほか、儀式や祭祀(さいし)にも用いられ、宴会では使い捨ての容器として利用されることもありました。
「欠け」は、器の一部が欠けて完全な形でなくなった状態を指します。器としては不十分に見えるため、一見すると、もう役に立たないもののように思われます。
しかし、このことわざは、欠けた土器であっても、まったく使い道がなくなるわけではないという見方から生まれています。水や食べ物を盛る器としては使いにくくても、小さな受け皿、目印、かけらとしての道具など、別の役割をもつことがあるという考え方です。
この表現で大切なのは、「完全でなければ価値がない」とは考えない点です。形が欠けていることと、役に立たないことは同じではなく、使い方を変えれば、欠けたものにも働きが残るという教えを含んでいます。
同じ発想をもつ言い方に、「大鋸屑も取柄」があります。大鋸屑は木を切ったあとに出る細かな屑ですが、それでも何かの役に立つという意味で、「土器の欠けも用あり」とよく似た考え方を表します。
「茶殻も肥になる」も、近いことわざです。飲み終えたあとの茶殻のように捨てるものでも、植物の肥料になることがあり、世の中にはまったく役に立たないものはないという意味をもちます。
「腐り縄にも取り所」も、捨てるしかないように見えるものでも、使い方によっては役に立つことがあるという意味です。これらのことわざは、物の価値を表面だけで決めず、使い道を見つける知恵を重んじています。
かわらけは、素焼きで比較的もろく、日常や儀式の場で広く使われた器でした。そのような身近な器が欠けた姿は、人々にとって「役に立たないように見えるもの」の分かりやすいたとえになったと考えられます。
このことわざは、物についてだけでなく、人や経験についても使えます。失敗した経験、古い道具、目立たない能力なども、場面が変われば役に立つことがあるという、ものを大切に見る考え方につながります。
現在では、壊れた品物を工夫して使う場合や、一見すると短所に見える性質を別の場面で生かす場合に使われます。不要に見えるものにも、まだ生かせる道があることを教えることわざです。
「土器の欠けも用あり」の使い方




「土器の欠けも用あり」の例文
- 古い木箱は少し壊れていたが、道具入れにすれば使えるので、土器の欠けも用ありだ。
- 失敗した実験の記録も、次の研究の手がかりになるなら、土器の欠けも用ありといえる。
- 余った布切れで小さな袋を作り、土器の欠けも用ありという考えを実感した。
- 傷のついた皿を植木鉢の受け皿に使えば、土器の欠けも用ありで無駄にならない。
- 苦手だと思っていた細かい作業が展示の飾りつけに役立ち、土器の欠けも用ありだと思った。
- 古い資料の一部だけでも昔の様子を知る手がかりになるのだから、土器の欠けも用ありだ。
主な参考文献
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・Cambridge University Press, Cambridge Advanced Learner’s Dictionary & Thesaurus.
・Merriam-Webster, Merriam-Webster.com Dictionary.























