【ことわざ】
腐り縄にも取り所
【読み方】
くさりなわにもとりどころ
【意味】
捨てるほかないように思える物にも、使い方によっては役立つところがあるというたとえ。


【類義語】
・大鋸屑も取柄(おがくずもとりえ)
・土器の欠けも用あり(かわらけのかけもようあり)
【対義語】
・腐り縄に馬繋ぐ(くさりなわにうまつなぐ)
「腐り縄にも取り所」の語源・由来
「腐り縄」とは、古くなって傷み、十分な強さを失った縄のことです。縄は、物を縛ったり、つるしたり、引いたりするための道具ですが、腐れば切れやすくなり、本来の用途には使いにくくなります。
「腐縄(くさりなわ)」という言葉は、室町時代末期の『玉塵抄(ぎょくじんしょう)』(1563年成立)に、すでに出てきます。そこでは、弱く頼りないものを表す比喩として腐った縄が用いられており、腐り縄には、「力がなく、当てにできないもの」という印象が早くから結び付いていました。
『毛吹草(けふきぐさ)』(1638年序・江戸時代前期、松江重頼編)には、「腐縄を杖に突く」という言い回しが収められています。これは、体を支えられない腐り縄を杖の代わりにするように、危険で頼りにならないものを当てにすることを表します。
これに対して、「腐り縄にも取り所」は、腐り縄に対する否定的な見方を逆向きに捉えたことわざです。縄全体が弱っており、本来どおりに重い物を縛ることはできなくても、用いる場所や目的を選べば、どこかに役立つ部分が残っているという発想を表しています。
「取り所(とりどころ)」とは、取り上げて評価できる長所や、採り入れるだけの値打ちがあるところを指します。そのため、このことわざは、腐り縄そのものを無理に使えという意味ではなく、その物の状態に合った使い方や、まだ利用できる部分を見つけることの大切さを示しています。
江戸時代中期の『絵本明ぼの草(えほんあけぼのぐさ)』(1770年、浪華禿帚子著、石川豊信画)は、三巻三冊から成る絵入りの書物です。その中巻には、「腐り縄ににも取り所」と記され、そのすぐ後に「腐り縄にも用がある」と続きます。
二つの表現が並んでいるため、当時の意味は明らかです。「取り所」とは、役に立つ点や使い道のことであり、捨ててしまうような物でも、見方や扱い方を変えれば、何かの役に立つという意味を表しています。表記には、「腐り縄ににも」と「に」が重なる形が残っていますが、現在は「腐り縄にも取り所」という形で用いられます。
同じ考えを表す形には、「腐り縄にも取柄」や「腐り縄も用に立つ」があります。「取り所」「取柄」「用に立つ」は、表し方こそ異なりますが、どれも、無価値に思える物の中にも利用できる点があるという教えを伝えています。
このように、「腐り縄にも取り所」は、役に立たない物の代表と見なされてきた腐り縄をあえて取り上げ、その中にも使い道はあると説いたことわざです。物を外見や現在の状態だけで決め付けず、それに適した役目や生かし方を探すという、実際的な知恵を今に伝えています。
「腐り縄にも取り所」の使い方




「腐り縄にも取り所」の例文
- 破れた布も小さく切れば飾りに使えるので、腐り縄にも取り所というものだ。
- 古い木箱を花壇に作り替えた父は、腐り縄にも取り所だと言って笑った。
- 失敗に終わった実験の記録にも、腐り縄にも取り所で、次の研究に役立つ情報が残っていた。
- 動かなくなった時計から使える部品を取り出すとは、まさに腐り縄にも取り所だ。
- 売れ残った端材を教材に利用する工夫は、腐り縄にも取り所の好例である。
- 腐り縄にも取り所というから、不要になった道具も捨てる前に別の使い道を考えたい。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・時田昌瑞『岩波ことわざ辞典』岩波書店、2000年。
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・新井藍子「スペインの諺辞典」『福岡大学人文論叢』第36巻第2号、福岡大学、2004年。
・松江重頼編『毛吹草』1638年序。
・浪華禿帚子著、石川豊信画『絵本明ぼの草』1770年。
・『玉塵抄』1563年。























