【ことわざ】
食うべき折に食わざるは粮なき者となる
【読み方】
くうべきおりにくわざるはかてなきものとなる
【意味】
好機が訪れたときに行動しなければ、のちに必要なものを得られず、困ることになるというたとえ。機会を逃してはならないという教え。


【英語】
・Make hay while the sun shines.(好機が続いているうちに、できることをしておけ)
【類義語】
・旨い物は宵に食え(うまいものはよいにくえ)
・鉄は熱いうちに打て(てつはあついうちにうて)
・善は急げ(ぜんはいそげ)
「食うべき折に食わざるは粮なき者となる」の語源・由来
このことわざは、食事を取れるときに食べずにいると、あとになって食べ物を得られなくなり、空腹に苦しむという場面をもとにしています。目の前にある食事を逃すことを、せっかく訪れた機会を生かさないことに重ねた表現です。
「折」は、ここでは紙などを折ることではなく、何かをするのに適した時や機会を指します。「食うべき折」とは、食べなければならない時というだけでなく、食べ物があり、食事を取ることのできる機会という意味です。
「粮」は「かて」と読み、食料を表します。現在一般に使う「糧」と同じ字として扱われ、「粮」はその俗字です。このことわざでは、心の支えなどの比喩的な意味ではなく、命を支える実際の食べ物を指しています。
「かて」は、古くは旅などに携えて行く食料を表しました。『万葉集』(8世紀後半成立、奈良時代)には「かりて」という古い形があり、のちに「かて」へと変化して、広く食料を指すようになりました。『日本書紀』(720年・奈良時代)には「兵食」を「カテ」と読む例があり、『三宝絵』(984年・平安時代中期、源為憲著)にも「かてなきものはうゑつかれたるなり」とあります。これは、食料のない者は飢え疲れてしまう、という意味です。
これらは、このことわざそのものの古い用例ではありませんが、「粮なき者となる」という後半の表現を理解する手がかりになります。食料を携えられなかったり、必要なときに確保できなかったりすれば、その後の旅や生活に困るという切実な意味が、「かて」という言葉には込められています。
表記には、ユーザーが示した「食うべき折に食わざるは粮なき者となる」のほか、「食うべき折りに食わざるは粮なき者となる」という、「折」に送り仮名を添える形もあります。「折」と「折り」は、いずれも「おり」と読み、ここでの意味に違いはありません。
言葉の前半では、食べ物と機会がそろっているのに食べないという判断を示し、後半では、その結果として食料を失った者になると戒めています。ただ「早く行動せよ」と命じるのではなく、好機を逃したあとの不足や後悔までを一続きに描いているところに、このことわざの特色があります。
「旨い物は宵に食え」も、食べ物の状態がよいうちに食べることから、利益になるものは事情が変わらないうちに手に入れるべきだと説きます。また、「鉄は熱いうちに打て」は、物事には適した時機があり、好機を逃してはならないことを表します。いずれも、条件が整っている今を生かすという点で、このことわざに通じます。
このように、食べられるときに食べておくという身近で具体的な知恵が、機会を得たらためらわず行動せよという広い教えへとつながっています。今できることを先延ばしにし、その機会が失われてから悔やむことのないよう戒めることわざです。
「食うべき折に食わざるは粮なき者となる」の使い方




「食うべき折に食わざるは粮なき者となる」の例文
- 留学の奨学金には応募期限があるため、食うべき折に食わざるは粮なき者となると考え、早めに書類をそろえた。
- 祖父は、収穫できるうちに作物を取り入れなければならないと、食うべき折に食わざるは粮なき者となるを引いて教えた。
- 限定販売の商品を買う機会を何度も見送った彼は、食うべき折に食わざるは粮なき者となると後悔した。
- 会社は市場が成長している間に新事業へ進むべきだと、食うべき折に食わざるは粮なき者となるの考えで決断した。
- 避難所へ向かう前に食料を確保したのは、食うべき折に食わざるは粮なき者となるという備えの知恵によるものだった。
- 食うべき折に食わざるは粮なき者となるというように、好機がいつまでも続くと思って行動を先延ばしにしてはならない。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・Cambridge University Press, Cambridge Dictionary.























