【ことわざ】
大鋸屑も取柄
【読み方】
おがくずもとりえ
【意味】
どんなものにも、何かしら役に立つところがあるというたとえ。まったく価値のないものはないことを表す。


【類義語】
・土器の欠けも用あり(かわらけのかけもようあり)
・茶殻も肥になる(ちゃがらもこえになる)
・曲がり木も用い所がある(まがりきももちいどころがある)
【対義語】
・無用の長物(むようのちょうぶつ)
「大鋸屑も取柄」の語源・由来
「大鋸屑(おがくず)」は、大鋸(おが)や鋸(のこぎり)で材木を挽(ひ)いたときに出る、細かな木の屑です。「大鋸」は、「おおが」が変化した言葉で、板を作るために用いた大きな縦挽きの鋸を指します。
日本では、室町時代に中国から二人挽きの大鋸が伝わりました。それ以前は、木に鑿(のみ)や楔(くさび)を打ち込んで割る方法が主でしたが、大鋸の導入によって、丸太から幅の広い板を効率よく切り出せるようになり、建築や木材加工の技術が大きく発達しました。
「大鋸屑」という言葉の古い例は、『三十二番職人歌合(さんじゅうにばんしょくにんうたあわせ)』(1494年ごろ・室町時代後期)にあります。この作品は、三十二種の職人を取り上げた歌合で、大鋸引きの歌には、鋸を挽くときに散る大鋸屑が、春風に舞う花になぞらえて詠まれています。
この用例は、室町時代後期には、大鋸を使って板を作る職人の仕事と、そこから生じる大鋸屑が、人々に知られていたことを示しています。大鋸の普及によって製材の量が増えると、大鋸屑も木工の場で日常的に生じるものとなりました。
大鋸屑は、完成した板や柱に比べれば、切り落とされた細かな屑にすぎません。そのため、不要なもののように思われがちですが、実際には、燃料、湿気止め、床の音を和らげる材料、蚊いぶし、防寒材など、さまざまな用途がありました。
「取柄」は「とりえ」と読み、とりたてて優れた点や長所を意味します。したがって、「大鋸屑も取柄」は、役に立たないように思われる大鋸屑にさえ、探せば役立つところがあるという、具体的な道理を表した言い方です。
この身近な木工のたとえから、どのようなものにも、それに適した使い道があるという教えが生まれました。昭和期には、「大鋸屑も取り柄」の形でことわざとして収められ、世の中にはまったく役に立たないものはないという意味で伝えられています。
よく似た表現に「大鋸屑も言えば言う」がありますが、意味は異なります。「大鋸屑も言えば言う」は、無用なものにも、もっともらしい理屈をつければ、価値があるように言いなせることを表します。これに対し、「大鋸屑も取柄」は、実際に使い道や長所があることに目を向けたことわざです。
「大鋸屑も取柄」の使い方




「大鋸屑も取柄」の例文
- 破れた色紙も細かく切れば飾りに使えるので、大鋸屑も取柄である。
- 失敗した実験の記録が次の研究に役立ち、大鋸屑も取柄だと分かった。
- 祖母は余った布で小さな袋を作り、大鋸屑も取柄という知恵を教えてくれた。
- 古い木箱を道具入れとして使う工夫は、大鋸屑も取柄のよい例だ。
- 大鋸屑も取柄というように、目立たない能力が思わぬ場面で役立つこともある。
- 取り外した機械の部品を修理に生かし、大鋸屑も取柄を実践した。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・尚学図書編『故事・俗信ことわざ大辞典』小学館、1982年。
・日本史広辞典編集委員会編『山川 日本史小辞典 改訂新版』山川出版社、2016年。
・『三十二番職人歌合』1494年ごろ。






















